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5歳でひらがなが書けないのは普通?発達段階と効果的な練習法を専門家が解説

完全個別指導塾「豪伸舎」塾長

安平町の完全個別指導塾「豪伸舎」の塾長。 適切な学習方法や塾選びの視点、気になる教材のレビューなど教育に関する情報をお伝えしていきます!

「周りの子はもうひらがなを書いているのに、うちの子は全然書けない…」「小学校入学までに間に合うのかしら?」

5歳になってもひらがなを書けないお子さんを持つ保護者の皆さん、そんな不安を抱えていませんか?実は、この悩みを持つご家庭は決して少なくありません。

結論から申し上げると、5歳でひらがなが書けなくても全く心配する必要はありません。子どもの発達には個人差があり、それぞれのペースで文字を習得していくものです。

この記事では、児童発達の専門的な観点から、5歳児のひらがな習得について詳しく解説します。文部科学省のデータに基づく実態、効果的な練習方法、そして親がやってはいけないNG行為まで、お子さんの成長をサポートするための情報を包括的にお伝えします。

【結論】5歳でひらがなが書けなくても心配不要

「5歳なのに、まだひらがなが書けない…」と不安に思う保護者の方は多いですが、結論から言うと心配する必要はありません。

ここでは文部科学省の調査データや発達の順序を踏まえ、正しい理解を整理します。

文部科学省データによる実態

まず最初に、多くの保護者が気になる「他の子はどのくらい書けているの?」という疑問にお答えします。

各種調査によると、年中(4〜5歳)でひらがなを書ける子どもの割合は以下のように報告されています。

  • 自分の名前を書ける:約70〜80%※1
  • 簡単なひらがなを書ける:約60〜70%※2
  • 50音すべて正しく書ける:約30〜40%※1,2

つまり、5歳で完璧にひらがなを書ける子は全体の半数以下なのです。また、男女差も存在し、一般的に女の子の方が文字習得が早い傾向にあります。


※1 ベネッセ教育総合研究所「ひらがなの勉強や生活習慣の準備」調査(年長児:10月28.7%、1月40%が「全て正しく書ける」と回答)
※2 学研教育総合研究所「幼児白書 2022年調査」(「ひらがなを書ける」62.0%、「読める」67.2%)

「書く」と「読む」の発達順序

多くの保護者が混同しがちなのが「読む」と「書く」の違いです。実は、この2つの能力は全く別物であり、発達の順序も異なります。

【正しい発達順序】

  • 読む(目安:3〜4歳頃から):文字の形を視覚的に認識し、音と結びつける
  • 書く(目安:4〜6歳頃から):手の細かい動きで文字の形を再現する

書くことが読むことより難しい理由は、以下のように複数の能力を同時に使う必要があるためです。

  • 運筆力:鉛筆を正しく持ち、なめらかに動かす力
  • 視空間認知:文字の形や位置関係を正確に把握する力
  • 記憶力:文字の形を頭の中で保持し続ける力
  • 集中力:一定時間、細かい作業に集中する力

このように「読めるのに書けない」というのは発達上ごく自然なことです。焦らず見守りながら、少しずつ経験を積ませることが大切です。

ひらがなの書字発達段階と年齢別目安

ひらがなが書けるようになるまでには、年齢ごとに段階的な発達があります。

ここでは0歳から小学校入学前までの流れを、年齢別の特徴と目安に沿って解説します。

0〜2歳:運筆力の基礎作り

ひらがなを書くための準備は、実は0歳から始まっています。この時期は、手や指の基本的な動きを育む重要な段階です。

育まれる基礎力

  • 握力の発達:クレヨンやペンを握る力
  • 手首の動き:自由に手首を動かす能力
  • 指先の器用さ:細かい動きをコントロールする力

この時期の代表的な活動

  • クレヨンでのなぐり描き
  • 指での粘土遊び
  • ブロック遊び

3〜4歳:文字への興味開始

3歳を過ぎると、意図的に丸や線を描けるようになり、身の回りにある文字の存在に気づき始めます。文字への関心が芽生える大切な時期です。

この時期の特徴

  • 丸や直線を意図的に描ける
  • 「これ何て書いてあるの?」と文字に興味を示す
  • 自分の名前を覚え始める
  • 絵本の文字を指さして質問する

4〜5歳:ひらがな読みの習得

多くの子どもがひらがなを読めるようになる時期ですが、読める文字数には大きな個人差があります。大切なのは「文字数」よりも「文字への興味」を育むことです。

読める文字数の目安

  • 4歳前半:10〜20文字程度
  • 4歳後半:20〜40文字程度
  • 5歳:40〜50文字程度

5〜6歳:書字への挑戦開始

読みがある程度身についてから、書くことへの興味が芽生えます。多くの子どもはまず自分の名前から書き始め、少しずつ他の文字へ広がっていきます。

書字習得の順序

  • 自分の名前(特に最初の1文字)
  • 簡単な一画文字(し、つ、く、へ など)
  • 二画の文字(こ、に、の、は など)
  • 複雑な文字(あ、ぬ、ね、ほ など)

5歳でひらがなが書けない原因と対策

5歳でひらがながまだ書けないのには、いくつかの理由があります。ここでは代表的な原因と、それぞれに合わせた対策を解説します。

お子さんの様子に合わせて、無理のない工夫を取り入れてみましょう。

興味・関心がまだない場合

この時期は、まだ文字そのものに強い関心を持たない子もいます。遊びや体を動かすことに夢中で、文字の必要性を感じていないケースも多いです。

原因

  • 文字よりも体を動かす遊びが好き
  • 文字の必要性を感じていない
  • 他に夢中になっていることがある

対策

  • 環境づくり:生活の中に自然に文字がある環境を作る
  • 好きなものと関連付け:好きなキャラクターの名前から始める
  • 遊びの中に組み込む:ゲーム感覚で文字に触れる機会を作る

読みがまだ不十分な場合

「書く」前に「読む」が十分でないと、文字の形と音が結びつかず書けないことがあります。まずは読みの習得を優先しましょう。

原因

  • 文字と音の結びつきが曖昧
  • 読める文字数が少ない
  • 文字への興味がまだ薄い

対策

  • 読みの練習を優先:書く前にしっかり読めるようにする
  • 読み聞かせの充実:文字を指で追いながら読む習慣をつける
  • 文字カードの活用:遊びながら自然に文字に親しむ

運筆力不足の場合

鉛筆の持ち方や手先の発達が未熟だと、書きたくても思うように書けません。基礎的な手の動きを鍛えることから始めるのが効果的です。

原因

  • 鉛筆を正しく持てない
  • 筆圧が弱すぎる、または強すぎる
  • 手の細かい動きが未発達
  • 集中力が続かない

対策

  • 運筆練習:線描きから始める基礎練習
  • 鉛筆の持ち方指導:正しい持ち方を丁寧に教える
  • 手指を使う遊び:粘土、折り紙、パズルなど
  • 短時間から開始:5〜10分の短時間集中練習

視空間認知の課題

文字の形や位置関係を正確に認識できないと、書き写しや形の再現が難しくなります。視覚的なサポートを活用して練習を進めましょう。

原因

  • 文字の形を正確に認識できない
  • 空間での位置関係が掴めない
  • 左右や上下の概念が曖昧

対策

  • 大きな文字での練習:最初は大きく書かせる
  • なぞり書きから開始:形を体で覚えさせる
  • ポイント書き:始点と終点を明確に示す
  • 視覚的補助の活用:色分けや矢印を使った指導

効果的なひらがな書字練習法【年齢別・段階別】

ひらがな練習は、年齢や発達段階に合わせて進めることで、無理なく身につけることができます。

ここでは「興味づけ」「準備」「実践」「定着」の4つの段階に分けて、効果的な方法をご紹介します。

興味づけ段階(まだ書くことに関心がない子)

まずは「文字って面白い!」「書いてみたい!」という気持ちを育てることが大切です。遊びや日常生活の中に文字を取り入れていきましょう。

具体的な方法

  1. ひらがな表の効果的活用
    • お風呂場やトイレに貼る
    • 子どもの好きなキャラクター入りを選ぶ
    • 毎日一緒に眺めて、クイズ形式で楽しむ
  2. 日常生活での文字探しゲーム
    • 外出時に看板の文字を探す
    • お菓子のパッケージから文字を見つける
    • 新聞や雑誌から知っている文字を探す
  3. 絵本の読み聞かせのコツ
    • 文字を指で追いながら読む
    • 大きな文字の絵本を選ぶ
    • 同じ絵本を繰り返し読む

準備段階(書く準備を整える)

文字を書くためには、運筆力や正しい姿勢などの基礎が必要です。この段階では、手や指の動きを鍛え、環境を整えることがポイントです。

具体的な方法

  1. 運筆練習の具体的方法
    • 直線練習:上から下、左から右の直線を引く
    • 曲線練習:波線、螺旋、丸を描く
    • ジグザグ練習:山や雷のような形を描く
  2. 正しい鉛筆の持ち方
    • 親指と人差し指で鉛筆を挟む
    • 中指で鉛筆を支える
    • 手首をまっすぐに保つ
    • 鉛筆補助具の活用も効果的
  3. 環境の整備
    • 机の高さ:肘が90度になる高さ
    • 椅子の高さ:足裏全体が床につく高さ
    • 照明:手元が明るく見える位置

実践段階(実際に書き始める)

準備が整ったら、簡単な文字から少しずつ練習を始めます。子どもが達成感を得られるような工夫を取り入れるのがポイントです。

具体的な方法

  1. 始めやすい文字の順序
    • 一画の文字:し、つ、く、へ、の
    • 二画の文字:こ、に、は、ほ、ち
    • 自分の名前:最も意味のある文字
    • 好きな言葉:ママ、パパ、好きなキャラクター名
  2. 段階的練習法
    • なぞり書き:薄い文字の上をなぞる
    • ポイント書き:始点と終点だけを示して書かせる
    • 見て書く:お手本を見ながら自分で書く
    • 思い出して書く:お手本なしで書く
  3. 褒め方・声かけのポイント
    • 「上手に書けたね」よりも「一生懸命書いたね」と努力を認める
    • 「前より上手になったね」と成長を強調する
    • 「この部分がとても良いね」と具体的に褒める
    • 間違いを指摘する前に、まず良い部分を見つける

定着段階(書けるようになった後)

ひらがなが書けるようになったら、それを生活の中で自然に使い続けることが大切です。習慣化することで、学んだ力が定着します。

具体的な方法

  1. 文字の美しさより内容重視
    • 完璧な形より、気持ちを込めて書くことを大切にする
    • 「読める」レベルで十分であることを理解する
    • 個性のある文字も認めて受け入れる
  2. 日記や手紙での活用
    • 簡単な一行日記から始める
    • 家族への手紙交換を楽しむ
    • お絵かきに文字を添える
  3. 継続のための工夫
    • 書いた作品を飾って達成感を味わわせる
    • 文字を書く場面を日常生活に取り入れる
    • 子どもの興味に合わせて題材を変える

家庭でできる具体的な取り組み15選

ひらがなの習得は、日常生活の中で楽しく取り組むことで自然と身についていきます。

ここでは「環境づくり」「遊びながら学ぶ方法」「段階的練習法」「モチベーション維持」の4つの視点から、家庭で実践できる具体的な方法を15個ご紹介します。

環境づくり

子どもがいつでも文字に触れられる環境を整えることで、自然と学習意欲が高まります。

  1. ひらがな表の効果的な貼り方
    • 子どもの目線の高さに貼る
    • 毎日目にする場所(洗面所、食卓など)を選ぶ
    • 文字だけでなくイラスト付きのものを選ぶ
  2. 書字スペースの整備
    • 専用の机と椅子を用意する
    • 気が散るものを周りに置かない
    • 必要な道具をすぐ使える位置に配置する
  3. 必要な道具の準備
    • 握りやすい太めの鉛筆(2B以上)
    • 鉛筆補助具(必要に応じて)
    • 大きめのマス目のある練習帳
    • 柔らかめの消しゴム

遊びながら学ぶ方法

遊びに文字を取り入れると「学び=楽しい」と感じられ、自然に練習が習慣化します。

  1. 砂や粘土での文字作り
    • 公園の砂場で指で文字を書く
    • 粘土をひも状にして文字の形を作る
    • 小麦粉粘土で文字作りを体験する
  2. 指で空中に文字を書く
    • 大きく腕を動かして空中で文字を描く
    • 子どもの背中に指で文字を書いて当てっこゲーム
    • お風呂の壁に指で文字を書く
  3. しりとりからの文字書き
    • しりとりで出た言葉の最初の文字を書く
    • 絵としりとりを組み合わせる
    • 家族みんなでしりとり大会
  4. かるたゲーム
    • ひらがなかるたで遊ぶ
    • 取った札の文字を書いてみる
    • 親子で手作りかるたを作成

段階的練習法

「なぞる → 書く → 思い出して書く」という段階を踏むことで、無理なくスキルを積み上げられます。

  1. 運筆練習シートの活用
    • 市販の運筆練習帳を活用
    • インターネットの無料プリントを印刷
    • 手作りの練習シートを用意する
  2. なぞり書きプリント
    • 薄いグレーの文字をなぞる
    • 点線の文字をなぞる
    • 徐々に薄くしていき、自力で書けるようにする
  3. 自分の名前書き練習
    • まず名前の最初の一文字から始める
    • 大きな文字から小さな文字へ移行する
    • 毎日少しずつ練習時間を作る
  4. 好きな言葉から始める
    • 好きな食べ物の名前
    • 好きなキャラクターの名前
    • 家族の名前

モチベーション維持

「できた!」という実感を積み重ねることが、学習を続ける最大のエネルギーになります。

  1. 書いた文字を褒めて飾る
    • 冷蔵庫や壁に作品を貼る
    • 専用のファイルを作って保存
    • 家族や祖父母に見せて褒めてもらう
  2. 手紙交換ゲーム
    • 家族間での手紙のやり取り
    • 絵と文字を組み合わせた手紙
    • ポストを作って手紙ごっこ
  3. 成長記録の作成
    • 月ごとに書いた文字を記録する
    • 写真付きの成長アルバムを作る
    • 子どもと一緒に振り返る時間を設ける
  4. ご褒美システム
    • 頑張った日はシールを貼る
    • 一定期間続けたら特別なお出かけ
    • 物よりも体験型のご褒美を重視する

やってはいけないNG行為と注意点

子どもがひらがなを書けるようになるためには、親の関わり方がとても大切です。

知らず知らずのうちに逆効果になってしまうNG行為を避け、正しいサポートを心がけましょう。

親がやりがちなNG行為

子どもを思う気持ちからつい口にしてしまう言葉や行動が、実は子どものやる気を奪ってしまうことがあります。

ここでは代表的なNG行為とその理由をまとめました。

  1. 他の子と比較する
    • 「○○ちゃんはもう書けているのに、なんであなたは書けないの?」
    • 「みんなできているよ」

    なぜダメなのか:

    • 子どもの自己肯定感を下げる
    • 文字への興味を失わせる
    • プレッシャーを与えて逆効果になる
  2. 無理やり練習させる
    • 「今日は絶対に10個書くまで終わらない」
    • 「嫌がっても座らせて練習させる」

    なぜダメなのか:

    • 文字に対してネガティブなイメージを持つ
    • 学習そのものを嫌いになる
    • 親子関係が悪化する可能性がある
  3. 完璧を求めすぎる
    • 「もっときれいに書きなさい」
    • 「字が汚いからやり直し」

    なぜダメなのか:

    • 書くことへの恐怖心を生む
    • 創造性や自主性を奪う
    • 完璧主義的な性格形成のリスクにつながる
  4. 叱る・急かす
    • 「なんでこんなに時間がかかるの?」
    • 「もっと速く書きなさい」

    なぜダメなのか:

    • 集中力を阻害する
    • 丁寧に書く習慣が身につかない
    • 焦りからミスが増える

正しい関わり方

子どもの成長を支えるためには、できたことを認め、楽しみながら学習できる環境を作ることが大切です。以下のような関わり方を意識しましょう。

  1. 子どものペースを尊重する
    • 「今日は一文字書けたね、すごいね」
    • 「疲れたら休憩しようか」
  2. プロセスを褒める
    • 「最後まで集中して頑張ったね」
    • 「丁寧に書こうとしている気持ちが伝わるよ」
  3. 楽しい雰囲気作り
    • 「今日はどの文字から書いてみる?」
    • 「ママも一緒に書いてみるね」
  4. 継続の重要性を理解する
    • 毎日少しずつでも続けることが大切
    • できない日があっても気にしない
    • 長期的な視点で子どもの成長を見守る

いつまでに専門家に相談すべき?

5歳でひらがなが書けないこと自体は珍しくありません。ただし、小学校入学後も困難が強く続く場合は、早めに専門家へ相談することで負担を軽減できることがあります。

以下は目安とチェックポイント、相談先の具体例です。

小学校入学後も書けない場合

次の時期・状態でも書字の困難が続くときは、学校や専門機関への相談を検討しましょう(あくまで目安です)。

相談を検討する時期

  • 小学1年生の2学期末:学校での指導を受けても習得が著しく困難
  • 小学2年生の1学期:基本的なひらがなが依然として書けない
  • 読みはできるのに「書く」だけが著しく困難(明確な能力差がある)

注意すべきサイン

  • 文字を書くことを極度に嫌がる、強い回避が見られる
  • 鉛筆の持ち方がなかなか身につかない(矯正しても安定しない)
  • 文字の形が覚えられない、筆順が定着しない
  • 書字に異常に時間がかかる、極端に疲れやすい
  • 他の学習面は問題ないのに、文字の書きのみが著しく困難

相談先と支援内容

まずは身近な機関へ相談し、必要に応じて専門機関の評価につなげる流れが現実的です。

  1. 小学校の担任教師
    • 学校での様子の共有(板書、ノート、宿題での困難など)
    • 家庭でのサポート方法の相談
    • 校内での個別支援・配慮(文字サイズ・行間・時間配慮など)の検討
  2. スクールカウンセラー
    • 学習面・情緒面の丁寧な聞き取りと評価
    • 適切な学習・支援方法の提案
    • 必要に応じて専門機関への紹介
  3. 発達相談センター(自治体)
    • 発達検査の実施と専門的な評価
    • 具体的な支援計画・助言
    • 地域資源(療育・リハビリ・相談機関)との連携
  4. 児童発達支援事業所
    • 個別の療育プログラム(書字・運筆・感覚統合など)
    • 専門的な訓練と家庭での取り組み方の指導
    • 定期的なモニタリングによる支援の見直し
  5. 医療機関(小児科・小児神経科・発達外来等)
    • 医師による医学的評価・必要な検査
    • 作業療法士(OT)・言語聴覚士(ST)等による専門的支援の提案
    • 学校・家庭と連携した合理的配慮の助言

発達障害との関連

書字の困難は、ディスグラフィア(dysgraphia:書字障害)など発達に関連する特性と関わる場合があります。

診断の有無や支援の要否は、医療機関等の専門的評価に基づいて判断されます。

ディスグラフィア(書字障害)の特徴の例

  • 文字の形が覚えられない、何度練習しても想起が難しい
  • 筆順が覚えられない、一定せず崩れやすい
  • バランスが悪く、大きさや位置関係が整わない
  • 書字速度が著しく遅い、他児と比べて時間がかかる
  • 短時間の書字でも極度に疲れやすい、痛みを訴えることがある

早期発見・早期支援の重要性

早めに気づき、適切な支援につなげることで、学習面・心理面の負担を減らしやすくなります。

  • 適切な支援により改善・代替手段の活用が期待できる
  • 二次的な学習困難(学習嫌い・自尊感情の低下など)を防ぎやすい
  • 子どもの自信を保ちやすく、将来の学習への影響を最小化できる

専門的な支援方法

評価結果に基づき、子どもの特性に合った方法を組み合わせます(例)。

  • 視覚的支援:色分け・矢印・始点終点マーク、拡大文字、行ガイド等
  • 感覚統合・運筆訓練:体幹・肩〜手指の協調性を高め、筆圧や動線を安定させる
  • 代替手段:タブレット・PC・音声入力・誤字自動補正・学習アプリの活用
  • 段階的指導:なぞり→模写→想起書字へ、ステップを細かく設定

※本記事は一般的な情報提供です。気になる場合は、学校・自治体の窓口や医療機関にご相談ください。

よくある質問(Q&A)

ひらがなの習得について、保護者の方からよくいただく質問と回答をまとめました。気になる点があれば、ぜひ参考にしてください。

5歳で全くひらがなが書けないのは遅すぎますか?

全く心配ありません。文部科学省のデータによると、5歳で完璧にひらがなを書ける子は半数以下です。

小学校1年生の1学期は、まさにひらがなを学ぶ期間として設定されています。

入学時点で書けなくても問題はありません。大切なのは、子どものペースに合わせることです。

左利きの子への教え方は?

左利きの場合は、次の点に注意してください。

  • 手で文字が隠れないよう、紙の位置を工夫する
  • 左利き用の鉛筆削りや文具を使用する
  • 書き順は右利きと同じで問題ない
  • 筆圧や速度には個人差があると理解する

左利きであることは個性であり、特別な問題ではありません。

読めるのに書けないのはなぜ?

これは非常によくあることです。「読む」と「書く」は全く別の能力だからです。

  • 読む: 視覚的に文字を認識し、音と結びつける
  • 書く: 手の細かい動き、記憶力、集中力など複数の能力を組み合わせる

読めることは書くための第一歩です。まずは読みをしっかり身につけ、その後に書く練習へ進みましょう。

どのくらいの時間練習すればいい?

年齢に応じた集中時間の目安は以下の通りです。

  • 3〜4歳:5〜10分
  • 5〜6歳:10〜20分
  • 小学生:20〜30分

短時間でも毎日継続することが大切です。子どもが疲れる前に切り上げ、「もっとやりたい」と思わせることが長続きのコツです。

市販のドリルはいつから使う?

ドリルを使い始める目安は以下の条件が揃ったときです。

  • ひらがなを20文字以上読める
  • 鉛筆を正しく持てる
  • 10分程度集中して座っていられる
  • 文字を書くことに興味を示している

この条件が揃ったら、簡単なドリルから始めましょう。最初は運筆練習から入るのがおすすめです。

タブレット学習は効果的?

タブレット学習にはメリットとデメリットがあります。

メリット

  • ゲーム感覚で楽しく学べる
  • 正しい書き順を視覚的に学べる
  • 即座にフィードバックがもらえる
  • 書字が苦手な子にとって代替手段となる

デメリット

  • 実際に鉛筆で書く感覚は身につかない
  • 筆圧や運筆の調整ができない
  • 画面時間が長くなる可能性がある

タブレット学習は紙での練習と併用するのがおすすめです。

まとめ

5歳でひらがなが書けないことは、決して心配すべきことではありません。子どもの発達には大きな個人差があり、それぞれのペースで文字を習得していきます。大切なのは焦らず、楽しく学べる環境を整えることです。

この記事のポイント:

  • 5歳で書けなくても問題ない:文部科学省のデータでも、完璧に書ける子は半数以下
  • 読みが先、書きが後:発達の順序を理解し、無理をしない
  • 個人差と発達段階の尊重:他の子と比較せず、その子のペースを大切に
  • 楽しい環境作りが重要:興味を引く工夫で自然に文字に親しませる
  • 段階的なアプローチ:興味づけ→準備→実践→定着の順番で進める
  • 家庭でできることはたくさんある:15の具体的取り組みを参考に実践
  • NG行為を避ける:比較、無理強い、完璧主義は逆効果
  • 長期的視点で取り組む:小学校入学後も困難が続く場合は専門家に相談

最も大切なのは、お子さんが「文字って楽しい」「書けるって嬉しい」と感じられる環境を作ることです。親の焦りや不安は子どもに伝わりやすいもの。まずは保護者の皆さんがリラックスし、お子さんの成長を温かく見守りましょう。

文字を書けるようになることは、お子さんにとって大きな成長の一歩です。その瞬間を一緒に喜び、共有できるよう、日々の関わりを大切にしてください。

もし小学校入学後も困難が続く場合は、遠慮なく専門家に相談してください。早期の適切な支援によって、お子さんの可能性を最大限に伸ばすことができます。

お子さんの文字習得の旅路が、親子にとって楽しく充実したものになることを心から願っています。

 

参考情報


※1 ベネッセ教育総合研究所「年長児のひらがな習得に関する調査」
※2 学研教育総合研究所「幼児白書2022」調査結果
※3 文部科学省「幼児教育、幼小接続に関する現状について」
※4 国立教育政策研究所「紀要 第153集」より、4〜5歳児の読み能力に関する統計

 

 

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