サフランは耐寒性が強く、特別な手入れがほとんど要らない育てやすい球根植物です。秋に咲く紫色の花も愛らしく、雌しべは世界一高価とも言われるスパイスの原料になります。
数多くの雌しべを収穫するには、できるだけ球根を太らせることが大切で、そのためには掘り上げや芽かきなどの管理がポイントになります。
この記事では、サフランの植え付けから収穫、球根を太らせる方法、土なし・水なしの手軽な楽しみ方まで、サフランの育て方をまとめて解説します。
サフランとは|基本情報
サフランは、アヤメ科クロッカス属(サフラン属)に分類される球根植物で、10月~11月に紫色の花を咲かせる秋咲きのクロッカスの仲間です。花の中央から伸びる赤い雌しべ(柱頭)を乾燥させたものが、香辛料・生薬として知られる「サフラン」です。
なお、名前のよく似た「イヌサフラン(コルチカム)」は、有毒成分を含むまったく別の植物です。本記事で扱う香辛料のサフラン(Crocus sativus)とは別物なので、混同しないよう注意しましょう。
| 分類 | アヤメ科クロッカス属(サフラン属) |
|---|---|
| 学名 | Crocus sativus |
| 別名 | 薬用サフラン、秋咲きクロッカス |
| 原産地 | 地中海東部~西アジア(諸説あり) |
| 性質 | 多年草(球根植物) |
| 草丈 | 約15~20cm |
| 開花期 | 10月~11月ごろ |
| 花色 | 紫 |
| 耐寒性/耐暑性 | 耐寒性は強い/高温多湿は苦手 |
| 用途 | 香辛料、生薬、染料、観賞 |
サフランの花言葉は「歓喜」「節度ある美しさ」などです。古くから高価な薬草・染料として珍重された歴史にちなんだ花言葉と言われています。
サフラン栽培に適した環境づくり
サフランは日当たりと風通しのよい場所で育てます。
基本的には涼しい気候を好み、極端な寒さや高温多湿は苦手です。生育期は日中15~20℃、夜間5~10℃程度が理想的です。
用土づくり
水はけと通気性がよく、適度な保水性のある土が向いています。市販の草花用培養土を使うか、赤玉土小粒6:腐葉土3:牛ふん堆肥1の割合で配合します。
酸性土壌を嫌うので、植え付け前に苦土石灰を混ぜて中和しておきましょう。
水と肥料の与え方
生育期は、土が乾いたらたっぷりと水を与えます。ただし過湿は禁物です。初夏に茎葉が枯れ始めたら、徐々に水を控えて休眠させます。
肥料は、元肥として緩効性化成肥料を規定量の半分ほど用土に混ぜます。追肥は、花後の11月下旬と生育期の2月下旬に、リン酸・カリ分の多い肥料を控えめに施します。窒素分が多いと球根が傷みやすいので注意しましょう。
地植え(植え付け)の時期と方法
地植えの適期は、8月下旬~9月中旬です。これを過ぎると花が小さくなりやすいので気をつけましょう。
手順は以下のとおりです。
- 風通しのよい日なたを選ぶ
- 植え付け前に苦土石灰を混ぜて酸度を調整する
- 球根2個分くらいの深さに植え付ける
水はけが悪い場所では、腐葉土などの有機物とパーライトや川砂をすき込んでおくとよいでしょう。
球根を浅く植えると、芽はたくさん出るものの花付きが悪くなることがあるため、植え付けの深さに注意してください。
鉢植え・プランターで育てる方法
サフランは鉢植え・プランターでも育てられます。高温多湿を嫌うので、風通しのよい日なたに置きましょう。
用土は、小粒の赤玉土7:腐葉土3で混ぜたものや市販の花の土を使います。酸性土壌を嫌うので、苦土石灰で中和しておきます。
植え付けの適期は8月下旬~9月上旬です。鉢に用土を入れ、球根1個分の深さに植えます。地植え同様、深さに注意しましょう。
植え替えの時期と方法
植え替えの適期は、暖かくなる3月~4月です。
植えっぱなしでも3~5年ほどは花を咲かせますが、2~4年ごとに古い球根を取り除くと球根が充実します。
鉢植えは5号鉢に5~6球、球根1個分くらいの深さに。庭植えは10cm程度の間隔をあけ、球根2個分くらいの深さに植え付けます。
サフランの花が咲く時期と香り
サフランは10月~11月に開花します。紫色の花の中央から、赤い雌しべが3本伸びているのが特徴で、この雌しべがスパイスになる部分です。1つの花から3本しか採れないため、非常に貴重です。
花後に細長い葉を伸ばし、春になると葉が枯れて休眠期に入ります。そして秋に再び花を咲かせるサイクルを繰り返します。
花にはやさしい甘い香りがあり、香料としても利用されます。
花が終わったらやるべきこと
花後に球根の手入れをしっかり行うことで、翌年もきれいな花を楽しめます。
| やること | ポイント |
| 花がら摘み | 咲き終わった花を摘み取ります。花がらを残すと球根の養分が奪われ、病害虫の原因にもなります。花がしおれる前に行うのがベストです。 |
| 肥料 | 翌年の開花を促すため、11月下旬と2月下旬の2回、化成肥料を適量株元にまきます。多すぎると球根が腐るので控えめに。 |
| 水やり | 生育期は土が乾いたらたっぷりと。過湿は避けます。初夏に茎葉が枯れ始めたら、徐々に水を控えて休眠させます。 |
| 球根の掘り上げと保管 | 夏の高温多湿で球根が腐ることがあるため掘り上げます。葉が黄変したら掘り上げ、雨の当たらない風通しのよい場所で乾かし、枯れた茎葉を取り除いて涼しい場所で保管します。 |
| 芽かき(芽の整理) | 球根は芽の数だけ分球するため、芽が多いと小さな球根しかできません。芽を1~2本残して他は摘み取ると、球根が充実します。 |
サフランの芽かきの方法と時期
花付きをよくするには「芽かき」が有効です。芽かきとは、花後に新しくできた芽を間引く作業です。余分な芽は球根の養分を奪うため、放置すると翌年の花付きが悪くなります。
- 花が咲き終わったら、葉の付け根から出る新しい芽を探す
- 芽を指でつまんで引き抜く
- 抜いた芽は土に埋めず処分する(埋めると腐って病気の原因になることがある)
- 冬から春にかけて、芽が出なくなるまで何度か繰り返す
サフランは10~11月に開花するので、芽かきはそれ以降に行います。
サフランの掘り上げ時期と方法
サフランは花後に葉を伸ばして球根を育て、春になると葉が枯れて球根だけになります。この球根を掘り上げることで、翌年も花を咲かせられます。
掘り上げの時期は、葉が完全に枯れる前です。完全に枯れてしまうと球根が小さくなったり腐ったりすることがあるため、一般的には葉が1/3~1/4ほど枯れた頃が適期とされています。
- シャベルなどで優しく土を掘り起こす
- 球根についた土を落とす(水洗いはしない)
- 親球から子球を優しく外す
- 分けた球根を日陰の風通しのよい場所に置く
- 次の植え付け時期(8~9月)まで、乾燥しすぎないように保管する
掘り上げ後に出てくる新しい芽は間引きます。間引かないと元の球根が十分に太らず、花付きが悪くなるためです。
掘り上げた球根は、親球がぺちゃんこになり、その上に子球が乗った状態になっているので、優しく外しましょう。保管の際は、ふるいやザルに入れて吊るすと風通しよく管理できます。
球根は植えっぱなしで毎年咲くのか
サフランの球根は、植えっぱなしでも毎年花を咲かせます。
ただし掘り上げをせずに数年放置すると、花が小さくなったり、球根が腐りやすくなったりします。球根が腐ると花は咲かなくなるので、できれば掘り上げて適切に管理するのがおすすめです。
球根の育て方・太らせる方法
掘り上げた球根を保管して翌年また植えることで、毎年花を楽しめます。その際は球根を太らせることが大切です。太った球根ほど花付きがよくなり、スパイスになる雌しべの収穫量も増えます。
| やること | ポイント |
| 球根を植え付ける | 風通しがよく、日当たりと水はけのよい場所に。時期は8月~9月ごろが適期です。 |
| 植え付けの深さ | 鉢植えは球根1個分、庭植えは2個分の深さに。複数植える場合は10cm程度の間隔をあけます。 |
| 肥料を与える | 生育期にリン酸・カリ分を含む肥料(草木灰など)を控えめに与えます。 |
| 芽かきをする | 芽が多いと小さな球根しかできません。芽を1~2本残して他は摘み取ります。 |
| 掘り上げる | 葉が黄色く枯れ始めたら掘り上げます。 |
サフランの球根の増やし方
サフランは「分球」で増やせます。分球とは、親球から分かれた子球を別々に植えて新しい株を作る方法です。
タイミングは葉が枯れた後、おおむね4月下旬~5月上旬ごろです。この時期には子球が十分に育っています。
- 球根を掘り上げる
- 日陰で乾燥させる
- 親球から子球を優しく引き離す(無理に外すと傷むので注意)
- 子球を日陰の風通しのよい場所で保管する
乾燥させた子球は、密閉容器やネットに入れ、涼しく暗い場所で保管します。高温多湿を嫌うので冷暗所が適していますが、湿気やカビに注意して定期的に状態を確認しましょう。
土なし・水なしでできるサフランの手軽な栽培
サフランの球根には花を咲かせる養分が蓄えられているため、土に植えず室内に置いておくだけでも花が咲きます。
その年だけ手軽に花を楽しみたい場合におすすめの方法です。
- 球根の尖った方を上にして、小皿や器に置く
- 直射日光の当たらない明るい場所に置く
- 水やりや肥料は与えず、そのまま置いておく
これだけで、10月中旬~11月ごろに紫色の花が咲き始めます。
ただしこの方法では、花を咲かせると球根が痩せてしまうため、翌年も咲かせるのは難しくなります。続けて楽しみたい場合は、花後に土へ植えて球根を太らせましょう。
室内での育て方
サフランは室内でも育てられます。ポイントをまとめました。
| ポイント | |
| 置き場所 | できるだけ窓際の明るい場所に。ただし直射日光で葉焼けすることがあるので、レースカーテンなどで調節します。 |
| 用土 | 屋外と同じ用土で構いません(「環境づくり」を参照)。 |
| 植え付け | 球根だけでも花が咲くため、水も土も使わずに楽しめます。土に植える場合は5号鉢に5~6球、球根1個分の深さに。 |
| 水やり | 生育期は土が乾いたらたっぷりと。過湿は避けます。初夏に枯れ始めたら水を控えて休眠させます。水栽培も可能ですが1シーズン限りです。 |
| 肥料 | 屋外と同じで構いません(「環境づくり」を参照)。 |
| 病気と害虫 | 軟腐病やネダニに注意します。軟腐病は高温多湿期や肥料の与えすぎで発生しやすく、ネダニは高温期に出やすくなります。風通しをよくすることが予防になります。 |
| 掘り上げと保管 | 室内栽培でも掘り上げは行います(「掘り上げ時期と方法」を参照)。 |
夏越しは球根が腐らないように注意する
サフランは耐暑性があまりなく、多湿を嫌います。花後に植えっぱなしで夏を迎えると球根が腐りやすいため、掘り上げて涼しい場所で保管します。
掘り上げた球根は日陰で乾かし、親球と子球に分けてから新聞紙などで包みます。保管場所は湿気が少なく涼しいところを選び、定期的に風を通しましょう。
耐寒性と冬越しの方法
サフランは耐寒性が強く、基本的には特別な防寒をしなくても冬越しできます。
ただし球根が凍結すると傷むことがあるため、寒冷地では冬前にマルチングをして保温しておくと安心です。凍結さえ防げれば冬越しできるので、地域の気温に合わせて調整しましょう。
サフラン栽培は北海道でも可能?
耐寒性が強いサフランは、寒さの厳しい北海道でも栽培できます。
凍結対策としてマルチングや、鉢植えなら軒下・室内での管理を行えば問題なく育てられます。実際に北海道内でサフランを栽培している農園もあり、寒冷地でも十分に栽培可能です。
収穫の時期と方法
サフランの収穫は、花が咲いたその日に行います。雌しべは時間がたつと品質が落ちやすいため、開花した朝のうちに花ごと摘み取るのがおすすめです。
摘んだその日に雌しべを取り出します。雌しべは3本に分かれており、香辛料に使うのは紅色の部分だけです。黄色い部分は取り除きます。
この作業はすべて手作業で、収量もわずかなため、サフランが高価になる理由のひとつになっています。
収穫した雌しべは、日陰でよく乾燥させてから、乾燥剤とともに密閉容器で保管します。風味が落ちないうちに使い切りましょう。
サフラン栽培が「副業」として注目される理由
サフラン栽培は副業として話題になることがあります。主な理由は次の2つです。
- 収穫物(スパイス)の単価が非常に高い
- 栽培自体は手間が少なく難しくない
サフランは重さあたりの単価が世界一高いとされるスパイスで、1gあたり数百円~千円程度、1kgでは100万円以上になることもあります。
その背景には、1gのサフランを得るのに150~160個もの花が必要で、摘み取りや雌しべの選別がすべて手作業という事情があります。
一方、日本国内では生産者の高齢化や減少が進んでいます。単価は高いものの、手作業中心で生産コストがかさむため、割に合わないとして辞めてしまう生産者も少なくありません。
とはいえ、サフランの栽培自体は手間が少なく、収穫後の半年は球根を育てる期間、その後も涼しい場所で球根を保管するだけです。農業未経験でも始めやすい点は確かで、副業として関心を集める理由になっています。ただし収益はコストや販路に左右されるため、儲かるかどうかは一概には言えない点に留意しましょう。
サフランの育て方に関するQ&A
最後に、よくある疑問にお答えします。
- 水栽培で咲かない理由は?
- クロッカスとの違いは何?
- サフランは危険なハーブ?
- サフランモドキの育て方も同じ?
- 球根はサカタのタネで売ってる?
水栽培で咲かない理由は?
水栽培でうまく咲かない主な原因は、水の量や管理が適切でないことです。
水栽培では球根が水に浸からないようにするのが大切です。球根が水に浸かると腐ってしまいます。逆に水が少なすぎても育ちにくくなります。水は毎日または数日に1度、清潔なものに換えましょう。
花後に薄めた液体肥料を与えると球根の充実に役立ちますが、濃すぎると球根が傷むので、規定の倍程度に薄めて与えます。
クロッカスとの違いは何?
サフランもクロッカスも、同じアヤメ科クロッカス属の球根植物です。サフランはクロッカス属の中の一種で、クロッカスは70~80種ともいわれる仲間の総称です。つまりサフランはクロッカスの一種にあたります。
主な違いは以下のとおりです。
| サフラン | クロッカス(一般的な観賞用) | |
| 開花時期 | 秋咲き(10月~11月) | 春咲き(2月~4月)が中心(秋咲き種もあり) |
| 花の色 | 紫(濃淡や模様の違いはある) | 白・黄・紫など多彩。混合色や絞り模様も |
| 雌しべ | 赤~オレンジ色で長く伸び、先が3裂する | 黄色で短め |
| 食用の有無 | 赤い雌しべを乾燥させて香辛料・ハーブティーに利用 | 一般に食用にはしない |
サフランは危険なハーブ?
香辛料として料理に使う通常の量であれば、サフランは安全に利用されているスパイスです。日本でも古くから親しまれ、生薬としても用いられてきました。
ただし、どんな食材でも極端に多量に摂れば体に負担がかかります。一般的に、妊娠中の方は念のため多量の摂取を避けるとよいとされています。心配な場合や持病がある場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。
なお、名前のよく似た「イヌサフラン(コルチカム)」はまったくの別植物で、有毒成分を含み、誤食による食中毒事例が報告されています。観賞用に植えている場合は、球根や葉を食用植物と取り違えないよう十分注意してください。香辛料として市販されているサフラン(Crocus sativus)とは別物です。
※健康に関する内容は一般的な情報であり、診断・治療を目的としたものではありません。
サフランモドキの育て方も同じ?
サフランモドキは、ヒガンバナ科タマスダレ属の常緑多年草で、ピンク色の花を咲かせます。サフランとは別の植物で、高価なスパイスが採れるわけではありません。日本には江戸末期に渡来し、当初サフランと誤認されましたが、明治初期に訂正された経緯があります。
育て方はサフランと大きくは変わりませんが、半日陰でも育ち、用土も選びにくい点が異なります。
球根はサカタのタネで売ってる?
サフランの球根はサカタのタネでも取り扱いがあります。在庫や価格は時期によって変わるため、購入を検討している方は公式の販売ページで最新情報を確認してみてください。
まとめ:サフランの育て方のポイント
サフランは、8~9月に植え付け、10~11月に紫色の花を咲かせる球根植物です。高級スパイスや染料として知られますが、自宅でも手軽に育てられます。
耐寒性が強く冬の心配は少ない一方、夏の高温多湿は苦手なので、掘り上げて涼しい場所で管理することが大切です。
たくさんの花と雌しべを楽しむコツは、植えっぱなしにせず、掘り上げや芽かきで球根をしっかり太らせること。ひと手間かけて、毎年美しいサフランを咲かせてみてくださいね。