セントジョーンズワートは、初夏にレモンのような香りの黄色い花を咲かせるオトギリソウ科のハーブで、丈夫で初心者でも育てやすい多年草です。
ただし、過湿を嫌うことと、地下茎やランナーで横にぐんぐん広がる性質があることだけは押さえておきたいポイントです。この2点さえ理解しておけば、栽培そのものは決して難しくありません。
この記事では、種まきや苗の植え付け、鉢植え・地植えそれぞれの育て方から、広がりすぎを防ぐコツ、挿し木・株分けでの増やし方、冬越しや収穫の方法まで、セントジョーンズワートの育て方を網羅的にお伝えします。
これから自宅で育ててみたいという方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
セントジョーンズワートとは
セントジョーンズワート(St. John's Wort 学名:Hypericum perforatum)は、オトギリソウ科オトギリソウ属に分類される多年草で、和名をセイヨウオトギリソウ(西洋弟切草)といいます。別名のヒペリカムでも知られています。
ヨーロッパから西アジアにかけてが原産で、現在は北米やオーストラリアなど世界の温帯地域に広く帰化しています。
草丈は30〜100cm程度に育ち、枝の先に黄色い5弁の花を咲かせます。葉や花には油点(オイルを含む小さな点)があり、花をこすると赤い色素がにじむのが特徴です。
聖ヨハネ(John the Baptist)の誕生日とされる6月24日ごろに花を咲かせることから、英名のセントジョーンズワートという名が付いたと伝えられています。古くからメディカルハーブとして利用され、近年はサプリメントとしても親しまれてきました。
なお、日長の影響を強く受ける長日植物で、日が長い時期にまとまって開花するという性質があります。この点は後ほど「花が咲かない原因」のところで詳しくお伝えします。
セントジョーンズワートの基本情報
| 科名・属名 | オトギリソウ科オトギリソウ属 |
| 和名 | セイヨウオトギリソウ(西洋弟切草) |
| 分類 | 多年草(半常緑〜常緑) |
| 草丈 | 30〜100cm程度 |
| 開花期 | 6〜8月ごろ(環境により5〜10月) |
| 花色 | 黄色 |
| 耐寒性・耐暑性 | 耐寒性は強い/過湿と高温多湿はやや苦手 |
| 日当たり | 日なた〜半日陰 |
セントジョーンズワートの栽培カレンダー
セントジョーンズワートの主な作業時期を一覧にまとめました。お住まいの地域の気候によって多少前後しますので、目安として参考にしてください。
| 種まき | 4〜5月/9〜10月 |
| 植え付け | 3〜4月/9〜10月 |
| 開花 | 6〜8月ごろ |
| 収穫 | 6〜8月ごろ(開花期) |
| 剪定・切り戻し | 花後/冬越し前 |
| 増やし方(挿し木) | 春〜夏 |
| 増やし方(株分け) | 春・秋 |
種まきと植え付けは春と秋の年2回チャンスがあります。夏は水切れしやすいため、はじめて育てる場合は涼しくなる秋の方が管理しやすいでしょう。
栽培に適した環境
セントジョーンズワートは丈夫なハーブですが、より元気に育てるためには置き場所と用土を整えてあげることが大切です。
置き場所
日なたから半日陰の、風通しの良い場所が適しています。日当たりが良いほどよく育ち花付きも良くなりますが、明るい半日陰でも問題なく育ちます。
一方で、湿気がこもる環境は苦手です。過湿になると根腐れの原因になるため、風通しを確保してください。
また、乾燥には比較的強いものの、真夏の強い直射日光が一日中当たる場所では葉焼けを起こすことがあります。夏の日差しが特に強い地域では、午後は日陰になるような場所を選ぶと安心です。
耐寒性は強く、寒さには比較的よく耐えますが、寒冷地で鉢植えにしている場合は冬期に軒下や室内へ移動させると安心です(冬越しの詳細は後述します)。
用土
セントジョーンズワートは水はけの良い土を好みます。過剰な水分は根腐れにつながるため、排水性の確保が最も重要です。
土壌酸度は中性からややアルカリ性(pH6.0〜7.5程度)が目安です。それほど肥沃でなくてもやせ地で育ちますが、適度に栄養分を含んだ土の方が生育は安定します。
市販の草花用培養土をベースにする場合は、全体の2〜3割を目安に川砂やパーライトを混ぜて排水性を高めるとよいでしょう。土の構造を改善するために、腐葉土や堆肥を適量加えるのもおすすめです。
土が酸性に傾いている場合は、苦土石灰を少量加えてpHを調整します。
種まきの方法と時期
セントジョーンズワートの種まきは、春(4〜5月)と秋(9〜10月)の年2回が適期です。発芽適温は15〜20℃程度なので、暑すぎず寒すぎない時期を選びましょう。
種は1mmほどと非常に小さく、光が当たることで発芽が促される好光性種子です。そのため覆土はごく薄くするか、ほとんどかけなくても構いません。種が小さく流れやすいので、いきなり地面に直まきするよりも、まずは育苗箱やポットにまいて育てる方が失敗が少なくなります。
種まきの手順は次のとおりです。
- 育苗箱やポットに用土を入れ、あらかじめ水で湿らせておく。
- 種が重ならないよう、表面にまんべんなくまく。
- 覆土はせず(またはごく薄くかける程度に)、霧吹きなどでやさしく水を与える。
- 明るい場所に置き、発芽までは土を乾かさないように管理する。
長日植物で明るい環境を好むため、夜も室内の明るい場所に置くなどすると発芽率が上がりやすくなります。
発芽したら、本葉が2〜3枚になったタイミングで間引きをして元気な苗を残します。間引いた苗は別の場所に移植することも可能です。草丈が15cmほどになったら、鉢や花壇へ定植します。
苗の植え付け
苗から育てる場合は、種まきよりも手軽で確実です。植え付けの適期は3〜4月と9〜10月ごろです。
ポット苗は根鉢を大きく崩さず、底の根が回っている部分を軽くほぐす程度にして植え付けます。植え付け後はたっぷりと水を与え、根が活着するまでは極端に乾かさないように管理しましょう。
地植えにする場合の株間は、後述する「広がりすぎ」を踏まえて広めに取るのがポイントです。詳しくは地植えの項で解説します。
鉢植え・プランターでの育て方
セントジョーンズワートは鉢植えやプランターでも問題なく育てられます。むしろ後述するように横へ広がる性質があるため、範囲を管理しやすい鉢植えはおすすめの育て方です。
鉢植えで育てる際のポイントは次のとおりです。
- 鉢は6号(直径18cm)以上、プランターなら深さ20cm・幅30cm以上を目安に選ぶ。
- 素焼き鉢・プラスチック鉢のどちらでも構わないが、排水性を確保するため鉢底石を敷く。
- 苗を植えるときは根を傷めないよう軽くほぐす。
- 複数植える場合は株間を20〜30cm程度あける。
コンパクトに切り詰めながら、小さめの鉢で育てることもできます。用土や水やり・肥料の与え方は、前後の項目を参照してください。
地植えでの育て方と「広がりすぎ」対策
セントジョーンズワートを地植えにする際に、最も知っておいてほしいのが「横に広がる」という性質です。
このハーブは地下茎やランナー(地表を這う茎)を伸ばし、そこから根を出して周囲へどんどん広がっていきます。条件が合うとグランドカバーになるほど旺盛に茂るため、放任すると花壇の他の植物の領域まで侵入してしまうことがあります。
広がりすぎを防ぐための対策は次のとおりです。
- 株間を広めに取る。地植えで長く育てる場合は最低でも50cm、大株に育てたい場合は1mほど離す。
- 定期的に根切りをして、広がる範囲を制限する。
- 広げたくない場合は、地中に仕切り板を入れる、または鉢植え・プランター栽培にする。
グランドカバーとして地面を覆わせたい場合は、この旺盛さがむしろ長所になります。目的に合わせて、広げるか抑えるかを決めて植え付けるとよいでしょう。
なお、こぼれ種でも自然に増えるため、近くの空き地や牧草地などに逸出(野生化)させないよう、管理できる範囲で育てることも大切です。
水やり・肥料の与え方
水やりは、土の表面が乾いたら与えるのが基本です。過湿は根腐れの最大の原因になるため、常に湿った状態にしないよう注意してください。
夏場は乾きやすいので、朝や夕方の涼しい時間帯に水を与えます。乾燥に強いとはいえ、鉢植えは水切れしやすいため、真夏は土の乾き具合をこまめに確認しましょう。冬場は生育が緩やかになるので、水やりは控えめにします。
肥料はあまり多くを必要としません。やせ地でも育つため、地植えではほとんど不要なこともあります。鉢植えの場合は、生育期である春から秋にかけて、緩効性肥料や液体肥料を控えめに与える程度で十分です。冬は施肥を控えます。
剪定・切り戻し
セントジョーンズワートは、放っておくと枝が伸びて樹形が乱れやすくなります。花が終わったあとに切り戻しをすると、樹形が整い、風通しも良くなって病害虫の予防にもつながります。
伸びすぎた枝や混み合った部分を切り詰めることで、コンパクトに保ちながら育てることができます。冬越し前にも切り戻しを行いますが、これについては冬越しの項で改めて触れます。
病害虫対策
セントジョーンズワートは比較的病害虫に強いハーブですが、環境によっては発生することがあります。
注意したい主な病害虫は次のとおりです。
- アブラムシ:新芽や蕾につきやすい。見つけ次第取り除くか、水で洗い流す。
- ハダニ:高温乾燥期に発生しやすい。葉裏に水をかけると予防になる。
- うどんこ病:風通しが悪く過湿気味の環境で発生しやすい。葉が白い粉をふいたようになる。
いずれも、風通しの良い環境を保ち、過湿を避けることが最大の予防策です。混み合った枝を剪定して株の内部まで風と日が通るようにすることで、発生をかなり抑えられます。
収穫と保存
セントジョーンズワートは、花や葉を収穫してハーブティーやオイルなどに利用できます。収穫は開花期である6〜8月ごろが中心です。
- 花はしおれるのが早いため、開花したら早めに摘み取る。茎ごと切り取るか、指でつまんで収穫する。
- 葉は花が咲く前に収穫する。茎の先端から3〜4枚を残して切り取る。
収穫した花や葉は、日陰の風通しの良い場所に広げて乾燥させます。しっかり乾いたら密閉容器に入れ、冷暗所で保管しましょう。
セントジョーンズワートのハーブティーやオイルの作り方・楽しみ方については、こちらのページで詳しくお伝えしています。あわせて参考にしてみてください。
増やし方(挿し木・株分け・こぼれ種)
セントジョーンズワートは、種まき以外にも複数の方法で増やすことができます。
- 挿し木
- 株分け
- こぼれ種(自然繁殖)
それぞれの方法と適した時期を見ていきましょう。
挿し木で増やす方法
挿し木は春から夏にかけて行います。
新芽が伸びた茎の先端から10〜15cm程度を切り取り、下のほうの葉を落として水に挿します。1ヶ月ほどで根が出てきたら、鉢や地面に植え付けます。発根までは直射日光を避け、水を切らさないように管理しましょう。
株分けで増やす方法
株分けは春と秋に行います。
大きく育った株を根ごと掘り上げ、いくつかに分けます。分けた株は乾かないうちに、すぐ鉢や地面に植え付けてたっぷり水を与えます。
こぼれ種で増える
セントジョーンズワートは、落ちた種から自然に発芽して増えることもあります。手をかけずに増えるのは魅力ですが、意図しない場所に広がることもあるため、増やしたくない場合は花後に種をつける前に花がらを摘んでおくとよいでしょう。
冬越しの方法
セントジョーンズワートは耐寒性が強い多年草で、多くの地域では戸外でそのまま冬を越せます。冬になると地上部が枯れることがありますが、地下部は生きており、春になると再び新芽を出します。
冬越しのポイントは次のとおりです。
- 越冬前に、枯れた茎や花がらを取り除いておく(病害虫の予防になる)。
- 株元から10cm程度の高さに切り戻し、コンパクトにして寒さに備える。
- 寒冷地では、鉢植えを軒下や室内・温室に移動させ、株元に藁や落ち葉を敷いて保温する。
- 水やりは土が乾いたら少量だけにとどめる(過湿による根腐れを防ぐ)。
これらの準備をしておけば、問題なく冬を越し、春には再び成長を始めてくれます。
セントジョーンズワートの栽培に関するQ&A
栽培でよくある疑問をまとめました。
- 花が咲かない原因は?
- 株間はどれくらいあければよい?
- セイヨウオトギリソウとの違いは?
- 食用にできる?
- ハーブティーに使える?
- グランドカバーになる?
それぞれ回答していきます。
花が咲かない原因は?
セントジョーンズワートは6〜8月ごろに黄色い花を咲かせますが、花が咲かない場合は次のような原因が考えられます。
- 日長の不足:長日植物のため、日が長い環境でないと花芽がつきにくい。
- 日当たりの不足:暗い日陰では生育・花付きともに悪くなる。
- 水やりが不適切:過湿で根を傷めている、または乾かしすぎている。
- 株が若い:植えたばかりの苗は、その年に咲かず翌年から咲くことも多い。
- 病害虫の影響:害虫や病気で株が弱っている。
特に見落としやすいのが日長です。セントジョーンズワートは長日植物で、日が一定以上長くならないと開花しにくい性質があります。日が短い時期に屋内などで育てている場合は、開花が進みにくいことがあります。
日当たりの良い場所で適切に管理し、株が十分に育てば、花を咲かせてくれる可能性が高まります。
株間はどれくらいあければよい?
育て方によって適切な株間は変わります。
鉢植えや、1シーズンで楽しむ場合は20〜30cm程度を目安にします。
一方、地植えで何年も育てる場合は、横へ広がる性質を踏まえて最低でも50cm、大株に育てたい場合は1mほど離すと、のびのびと育ちます。株間が狭すぎると風通しが悪くなり病害虫の原因になるため、長く育てるほど広めに取るのがおすすめです。
セイヨウオトギリソウとの違いは?
セイヨウオトギリソウは、セントジョーンズワートの和名です。つまり両者は同じ植物で、呼び方が違うだけです。
英語圏では「セントジョーンズワート」、日本語では「セイヨウオトギリソウ」と呼ばれます。海外ではサプリメントとして親しまれ、日本では古くからメディカルハーブとして利用されてきました。
なお、利用にあたっては注意も必要です。医薬品と併用すると薬の効き目に影響することがあり、妊娠中・授乳中の使用は避けるべきとされています。また光毒性があるため、利用後に日光に当たると皮膚に影響が出ることがあります。利用を検討する場合は、事前に医師や薬剤師に相談してください。
食用にできる?
セントジョーンズワートはハーブティーやオイルに利用されることが多いハーブです。
ただし、摂取量によっては体調や医薬品との関係で影響が出る可能性があるため、口にする際は量に注意が必要です。妊娠中・授乳中の方や、薬を服用している方は特に慎重にし、事前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
ハーブティーに使える?
はい、乾燥させた花や葉はハーブティーとして利用できます。淹れ方や楽しみ方は、セントジョーンズワートのハーブティーのページで詳しく紹介しています。利用上の注意点もありますので、あわせてご確認ください。
グランドカバーになる?
横に広がる性質があるため、地面を覆うグランドカバーとして利用することもできます。
ただし、その旺盛さゆえに広がりすぎることもあるため、覆わせたい範囲を決めて、はみ出した部分は根切りや剪定で管理するとよいでしょう。
まとめ:セントジョーンズワートの育て方
セントジョーンズワートの育て方についてお伝えしました。
栽培はそれほど難しくなく、鉢植えでも地植えでも気軽に育てられるため、ハーブ栽培の初心者にもおすすめです。過湿を避けることと、地下茎やランナーで横に広がる性質を理解しておくことが、上手に育てる最大のコツです。
適した置き場所と水はけの良い土を用意し、種まきまたは苗の植え付けから始めてみましょう。順調に育ったら、挿し木や株分けで増やしたり、収穫した花や葉でハーブティーやオイルづくりを楽しんだりするのもおすすめです。
耐寒性は強いハーブですが、寒冷地では冬越しに少し気を配って、長く栽培を楽しんでくださいね。