コモンマロウはヨーロッパを原産とするアオイ科の多年草で、別名ブルーマロウ、和名ではウスベニアオイとも呼ばれるハーブです。
バジルやミントほどメジャーではないことから、育て方や注意点の情報が足りないと感じている方も多いと思います。
この記事では、コモンマロウの種まきや植え付けの基本から、大きく育てるコツ、花が咲かない時の対策、夏越し・冬越しの方法まで幅広くご紹介します。
コモンマロウは青や紫の花を咲かせ、乾燥させた花のハーブティーにレモンを加えると色が変わることでも知られています。ぜひご家庭でも育ててみてくださいね。
コモンマロウの基本情報
まずは、コモンマロウの基本的なデータを表にまとめました。
| 項目 | 内容 |
| 学名 | Malva sylvestris |
| 科名・属名 | アオイ科ゼニアオイ属(マルバ属) |
| 別名・和名 | コモンマロウ、ブルーマロウ、ウスベニアオイ(薄紅葵) |
| 原産地 | ヨーロッパ |
| 性質 | 多年草(宿根草) |
| 草丈 | およそ60cm〜2m(環境により大きく育つ) |
| 開花期 | 5〜8月頃 |
| 花色 | 赤紫〜薄紫(濃い筋が入る)、白 |
| 耐寒性/耐暑性 | 耐寒性はある/耐暑性は比較的強い(高温多湿の蒸れには注意) |
| 花言葉 | 「柔和な心」など |
コモンマロウとして流通しているのは、主にウスベニアオイ(Malva sylvestris)です。よく似た仲間に、道端でも野生化しているゼニアオイや、麝香の香りがあるムスクマロウ(ジャコウアオイ)があります。
ここで覚えておきたい最大のポイントは、コモンマロウが直根性で移植を嫌う植物であること、そして想像以上に大きく育つことです。この2点を押さえておくと、植え場所選びや育て方で失敗しにくくなります。詳しくは以下で順番に解説していきます。
コモンマロウ栽培の環境づくり
コモンマロウは、日当たりと風通しの良い場所を好みます。日当たりが良いほど花付きが良くなり、株もしっかりと育ちます。
ただし、暑さの厳しい地域では真夏の強い直射日光や蒸れで株が弱ることがあります。鉢植えの場合は、真夏だけ風通しの良い半日陰に移動させると安心です。
元気に育てるための環境づくりとして、用土づくり、水やり、肥料の与え方のポイントを以下にお伝えします。
用土づくり
コモンマロウは過湿に弱いため、水はけの良い土壌が適しています。
酸性の土を嫌い、中性〜弱アルカリ性を好みます。庭植えの場合は、植え付けの1〜2週間前に苦土石灰を混ぜて土の酸度を中和しておくと良いでしょう。
そのうえで、腐葉土や堆肥などの有機質を土に混ぜ込み、保水性と通気性を改善しておきます。コモンマロウは肥沃な土を好むので、植え付け前にしっかり土づくりをしておくと生育が良くなります。
また、直根性で根が深く伸びるため、植え付け前に土の中の石や根を取り除き、深さ30cmほどを目安によく耕してふかふかにほぐしておきます。これにより根が下へ伸びやすくなります。
水やり
コモンマロウは乾燥に比較的強い植物ですが、生育期に水が不足すると花付きが悪くなったり株がぐったりしたりします。
庭植えの場合、根付いたあとは基本的に降雨にまかせて構いませんが、何日も雨が降らず乾燥が続くときはたっぷりと与えます。
鉢植えの場合は、土の表面が乾いたらたっぷりと与えます。株が大きく葉も多いため、特に夏は乾きやすく、朝夕の水やりが必要になることもあります。
水やりは朝か夕方の涼しい時間帯に、株元へ与えるようにします。日中の暑い時間や、夜に葉が濡れたままの状態が続くと、蒸れや病気の原因になることがあります。
肥料の与え方
肥料は、植え付け時に元肥として緩効性肥料を土に混ぜ込んでおきます。
その後の追肥は、成長が始まる春と秋に緩効性肥料を施す程度で十分です。鉢植えで花つきを良くしたい場合は、開花期に緩効性肥料を月1回ほど、または薄めた液体肥料を施します。
ただし、多肥にすると茎ばかりが伸びて倒れやすくなります。与えすぎには注意し、控えめを心がけましょう。
種まきの時期と方法
コモンマロウの種まき時期は、春(4〜6月)または秋(9月頃)が適しています。
ここで重要なのが、コモンマロウは直根性で移植を嫌うという性質です。育苗トレーで育ててから植え替える方法は根を傷めやすく、生育不良の原因になります。そのため、種まきは植えたい場所への直まきか、根をあまりいじらずに定植できるポットまきで行うのが基本です。
コモンマロウの種まき方法は、以下のように行います。
- 直まきの場合は植えたい場所に、ポットまきの場合はポットに、それぞれ用土を入れる。
- 2〜3粒ずつ、種同士が重ならないようにまく。
- 5mm程度の薄さで軽く覆土する。
- 土が乾かない程度に、霧吹きなどでやさしく水を与える。
- 発芽までは乾かさないように管理する(発芽適温は15〜20℃程度)。
- 2週間ほどで発芽したら、生育の良いものを残して間引く。
- 本葉が3〜4枚になったら、直まきは1本に間引き、ポットまきは根を崩さないようにそっと定植する。
定植の際は、直根や根鉢を崩さないよう特に注意します。根を傷めると枯れてしまうことがあるためです。
苗の植え付け・地植えの時期と方法
市販の苗を植え付ける場合や、ポット苗を地植えにする場合の適期は、春(3〜5月頃)または秋(9〜10月頃)です。
植え付けで最も大切なのは、繰り返しになりますが直根性で移植を嫌う性質への配慮です。ポット苗の土はできるだけ崩さず、根を傷つけないようにそのまま植え付けます。植え付け後に土を強く押さえつけすぎないようにしましょう。
また、コモンマロウは草丈が1.5〜2mほどにもなる大きな植物です。あとから動かせないことを踏まえ、植え場所は慎重に選びます。
土づくりを行った後、以下の手順で植え付けます。
- 株が大きく育つことと直根性を踏まえ、移植せずに育てられる場所を選ぶ。
- 苗の根鉢がすっぽり入る大きさの植え穴を掘る。
- 地植えで複数植える場合は、株と株の間を80cm〜1m程度あける。
- 根鉢を崩さないように苗を植え付け、株元を軽く押さえて土となじませる。
- 株元からたっぷりと水やりをする。
背丈が高くなるので、花壇では後方に植えると全体のバランスが良くなります。
鉢植え・プランターで育てる方法
コモンマロウは鉢植えやプランターでも育てられますが、根が深く伸びる直根性で、草丈も高くなるため、できるだけ大きく深さのある容器を選ぶことが大切です。
育て方は次のとおりです。
- 深さと容量のある鉢・プランターを選ぶ(底に穴があることを確認する)。
- 鉢底ネットと鉢底石を入れ、水はけの良い用土を入れる。
- 苗の根鉢を崩さないようにそっと取り出し、植え穴に入れる。
- 株元を軽く押さえて土となじませる。
- 株元からたっぷりと水を与える。
- 鉢・プランターを日当たりと風通しの良い場所に置く。
鉢の大きさは、尺鉢(10号鉢・直径30cm)に1株が目安です。大きく育つ植物なので、小さすぎる鉢では根詰まりや生育不良の原因になります。
コモンマロウは日陰でも育つのか
コモンマロウは多少の半日陰でも枯れることはありませんが、しっかり育てるなら日なたがおすすめです。
日当たりが不足すると、以下のようなことが起こりやすくなります。
- 花付きが悪くなる、または開花が遅れる
- 茎が間延びして倒れやすくなる
- 風通しが悪くなりがちで、病気や害虫が発生しやすくなる
どうしても半日陰で育てたい場合は、以下の点に気をつけましょう。
- できるだけ明るく、午前中など一定時間は日が差す場所を選ぶ
- 葉が混み合ったら間引いて風通しを良くする
- 湿気がこもらないようにする
- 茎が倒れないように支柱やネットで支える
支柱立て・摘心・剪定など日々の手入れ
コモンマロウは草丈が高くなるため、手入れの仕方で見栄えと健康状態が大きく変わります。
支柱立て
草丈が高くなると、風で倒れやすくなります。ある程度伸びてきたら、支柱やネットを立てて支えておくと安心です。
摘心(摘芯)
あまり大きくしたくない場合や、枝数を増やして花を多く咲かせたい場合は、茎の先端を摘み取る摘心が効果的です。
摘心は成長が旺盛な春から初夏に行います。先端の芽を摘むと、わき芽が伸びて枝数が増え、こんもりとした株になります。枝が混み合ってきたら、日光と風が通るように葉や枝を適度に間引きましょう。
花がら摘み・剪定
咲き終わった花はこまめに摘み取ります。花茎全体の花が終わったら、花茎を根元から切り戻すと、株が消耗せず次の花も咲きやすくなります。
株が混み合って蒸れそうなときは、茎を部分的に切って風通しを良くしておきます。
冬に地上部が枯れてきたら、株元から10〜20cmほど残して短く切り戻しておくと、春の芽吹きをすっきりと迎えられます。
増やし方
コモンマロウの増やし方は、主に次の3つです。
- 種まき
- 株分け
- こぼれ種
直根性で移植を嫌う性質があるため、挿し木や葉挿しはあまり向きません。種まき・株分け・こぼれ種で増やすのが基本です。種まきの方法は前述のとおりなので、ここでは株分けとこぼれ種について解説します。
株分けで増やす方法
株分けの適期は、地上部が枯れる10〜11月頃です。大株に育ったものを対象に行います。
具体的な手順は以下のとおりです。
- 株を掘り上げる、または鉢から取り出して土を落とす。
- 芽を傷つけないように注意しながら、1株に3〜5芽つくようにハサミで切り分ける。
- 水はけの良い土に植え付ける。
- 植え付け後にたっぷりと水を与える。
あまり細かく分けすぎると株の再生に時間がかかるため、ざっくりと分けるのがコツです。なお、コモンマロウは株の寿命がそれほど長くない宿根草で、4〜5年ほどで生育が衰えてきます。株分けや種まきで定期的に株を更新していくと、長く楽しめます。
こぼれ種でも増える
コモンマロウは、こぼれ種でも自然に増えていきます。
花が咲き終わると花のあとに実ができ、最初は緑色だったものが熟すと茶色くなります。やがて実が割れ、中から扁平な種がこぼれ落ちて、翌年あちこちで発芽します。周囲に発芽した苗は、小さいうちに移したい場所へ定植してもよいでしょう。
種を採取して保存する場合
別の場所にまきたい場合は、種を採取して保存できます。
実が割れると種が飛んでしまうため、茶色く熟して割れる前に花茎ごと、または実を摘み取ります。採取した実は新聞紙などに広げて日陰で乾燥させ、中から種を取り出します。種は乾燥剤を入れた密封容器に入れ、涼しく暗い場所で保存しましょう。
収穫の時期と方法
コモンマロウは5〜8月に開花し、花が多く色も鮮やかな初夏〜夏が花の収穫の適期です。
花はハーブティーなどに利用されることが多く、ここでは花の収穫方法をご紹介します。
- 咲いた花をその日のうちに摘み取る(一日花なので、咲いた日が収穫のタイミングです)。
- 花の部分を摘み取る。
- 新聞紙やキッチンペーパーなどに重ならないように広げる。
- 日陰で風通しの良い場所に置き、乾燥させる。
- しっかり乾燥したら、乾燥剤を入れた密封容器に入れて保存する。
コモンマロウの花は一日花で、咲いた翌日にはしぼんでしまいますが、次々と咲くので少しずつ収穫を続けられます。
乾燥させた花にお湯を注ぐと青色のお茶になり、そこにレモンなどの酸性のものを加えると、青からピンク色へと変化します。この色の移り変わりが美しいことから「夜明けのハーブティー」とも呼ばれ、ヨーロッパでは古くから親しまれてきました。
コモンマロウのハーブティーについてはこちらのページもご参照ください。
夏越しのやり方と注意点
コモンマロウは耐暑性が比較的ある植物ですが、高温多湿による蒸れには弱い面があります。
夏越しのポイントは以下のとおりです。
- 風通しを良くしておく。葉が混み合っていたら間引いて蒸れを防ぐ。
- 鉢植えは、暑さの厳しい地域では真夏だけ風通しの良い半日陰に移動させると安心。
- 鉢植えは土の表面が乾いたらたっぷり、庭植えは乾燥がひどいときに水やりする。
- 多肥は倒れやすくなる原因になるため、夏の施肥は控えめにする。
- 花がら摘みや花茎の切り戻しを行い、株を整える。
冬越しのやり方と注意点
コモンマロウは耐寒性があり、冬は地上部が枯れたようになって越冬する宿根草です。春になると株元から再び芽吹きます。
基本的に難しい防寒は必要ありませんが、冬越しのポイントは以下のとおりです。
- 地上部が枯れてきたら、株元から10〜20cmほど残して切り戻す。
- 土が凍結するような寒冷地では、株元に落ち葉や腐葉土、藁などを敷いてマルチングすると安心。
- 地上部が枯れても土の中で根は生きている。鉢植えは特に、冬場の極端な乾燥に注意して、乾きすぎたら少量与える。
- 冬の間は肥料を施さない。
寒冷地でも、株元の防寒や鉢植えの管理に気を配れば冬越しは可能です。
花が咲かない時の対策
コモンマロウの花が咲かない主な原因は、以下の3つに分けられます。
| 原因 | 対策 |
| 日当たり不足 | 日当たりと風通しの良い場所で育てることが大切です。日照が不足すると成長が遅くなり、花付きも悪くなります。日陰や室内で育てている場合は、より日当たりの良い場所へ移しましょう。 |
| 栄養の過不足 | 肥沃な土を好むため、土が痩せていると花芽がつきにくくなります。一方で多肥にすると茎ばかり伸びて倒れやすくなります。植え付け時に元肥を入れ、春と秋に緩効性肥料を控えめに施すのが目安です。 |
| 株が混み合っている/伸びすぎ | 草丈が高くなる植物なので、間延びして混み合うと風通しが悪くなり花付きにも影響します。摘心で枝数を増やしつつ、混み合った部分を間引いて整えましょう。 |
種まきから開花までは数か月かかり、秋まきのものは冬の寒さに当たってから翌年に開花します。花が咲かないと感じたら、早めに上記を見直してみてくださいね。
コモンマロウの育て方に関するQ&A
ここでは、コモンマロウの育て方に関するQ&A(質問&回答)を紹介します。
- 注意すべき病害虫は?
- 北海道で栽培できる?
上記の問いについて回答していきます。
注意すべき病害虫は?
コモンマロウは比較的丈夫ですが、注意したい病害虫として以下が挙げられます。
- アブラムシ
- フタトガリコヤガ(葉を食害する害虫)
- 斑点病
それぞれについて見ていきましょう。
アブラムシ
春先から、伸び始めた茎や花芽に発生しやすい害虫です。吸汁されると生育が悪くなり、ウイルス病を媒介することもあります。見つけたら早めに取り除きます。花や葉をハーブとして利用する場合は薬剤を避け、こすり落としたり水で洗い流したりして対処すると安心です。
フタトガリコヤガ
アオイ科の植物につきやすい、葉を食害する害虫です。幼虫が葉を食べて穴をあけたり葉を欠いたりします。見つけたら手で取り除くか、状況に応じて薬剤で防除します。
斑点病
葉に褐色〜黒っぽい斑点が出る病気で、湿度が高く風通しの悪い場所で発生しやすくなります。広がると葉が枯れることもあるため、発病した葉は早めに取り除いて処分します。水やりは朝の涼しい時間帯に株元へ行い、風通しを良く保つことが予防につながります。
北海道でも栽培できる?
コモンマロウは耐寒性があり寒さに強いため、適切に管理すれば北海道のような寒冷地でも栽培できます。
寒冷地で育てる際の注意点は以下のとおりです。
- 種まきは春に行う。冬が長く寒いため、春にまいて夏までに株を大きく育てる。
- 発芽適温は15〜20℃程度なので、気温が低い時期は室内やビニールトンネルなどを活用する。
- 水はけの良い土を選び、酸性土は苦土石灰で中和しておく。
- 日当たりと風通しの良い場所に植え、背が高くなるので支柱で支える。
- 冬は地上部を切り戻し、株元を落ち葉や枯草で覆って保温する。鉢植えは軒下など寒風の当たりにくい場所へ移すと安心。
まとめ:コモンマロウの育て方について
コモンマロウは丈夫で育てやすいハーブですが、上手に育てるには2つのポイントを押さえておくことが大切です。
ひとつは、直根性で移植を嫌うため、種まきは直まきかポットまきで行い、苗は根を崩さずに植えること。もうひとつは、草丈が1.5〜2mほどにも育つため、植え場所をあらかじめよく考えておくことです。
日当たり・風通し・水はけの良い場所に、有機質を加えた中性〜弱アルカリ性の土で植え付けます。肥料は控えめにし、多肥による倒伏を避けましょう。支柱立てや摘心、花がら摘みで整えれば、たくさんの花を楽しめます。
夏越し・冬越しもそれほど手はかかりません。きれいな花が咲くコモンマロウを、ぜひ育ててみてくださいね。