
ラムズイヤー(スタキス)は、羊の耳のようにふわふわとした銀白色の葉が魅力の多年草です。シルバーリーフのカラーリーフプランツとして、また初夏に咲く紫やピンクの花やドライフラワー素材としても人気があります。
寒さには強い一方で、日本の高温多湿の夏が大の苦手というのが、ラムズイヤー栽培の最大のポイントです。逆に言えば、夏越しのコツさえ押さえれば、丈夫で育てやすく、よく増える植物です。
この記事では、ラムズイヤーの育て方を、栽培環境づくりから種まき・植え付け、最重要の夏越し、株分けでの増やし方、増えすぎを防ぐ方法まで、わかりやすく解説します。
ラムズイヤーの基本情報と特徴
育て方の前に、まずはラムズイヤーがどんな植物なのか、基本情報を押さえておきましょう。性質を知っておくと、栽培のポイントが理解しやすくなります。
| 科名・属名 | シソ科イヌゴマ属(スタキス属) |
| 学名 | Stachys byzantina |
| 分類 | 多年草(カラーリーフ・ハーブ) |
| 原産地 | コーカサス〜西アジア |
| 草丈 | およそ30〜80cm |
| 開花期 | 5月中旬〜7月ごろ |
| 耐寒性 | 強い(−10℃程度まで) |
| 耐暑性 | 弱い(高温多湿が苦手) |
ラムズイヤーはシソ科の多年草で、その名は葉が「ラム(子羊)の耳」に似ていることに由来します。楕円形の葉が白く細かな産毛にびっしりと覆われ、ベルベットのような柔らかな手触りと、爽やかなシルバーグリーンの葉色が特徴です。
この銀白色の葉を生かして、カラーリーフプランツやグランドカバーとして親しまれています。初夏には花茎を立ち上げ、紫やピンクの小さな花を穂状に咲かせます。葉や花はドライフラワーやポプリのクラフト素材としても利用できます。なお、産毛のある葉はアレルギー体質の方では肌に触れるとかぶれることがあるため、手入れの際は気になる方は手袋を使うと安心です。
ラムズイヤー栽培に適した環境と土づくり
ラムズイヤーを上手に育てる第一歩は、置き場所と土の準備です。「日なたを好むが夏の蒸れに弱い」という性質を理解しておきましょう。
日当たり・置き場所
ラムズイヤーは日当たりと風通しの良い場所を好みます。日照が不足すると、ひょろひょろと徒長して間のびした草姿になり、花つきも悪くなります。涼しい季節は、よく日の当たる場所でしっかり育てましょう。
ただし、日本の夏の高温多湿は大の苦手です。「日光が苦手」なのではなく「夏の蒸れが苦手」という点がポイントで、真夏だけは風通しの良い半日陰へ移すのが基本になります。特に夏の西日は株を傷めるので避けましょう。このため、季節に応じて移動できる鉢植えでの栽培も管理しやすくおすすめです。
用土の選び方
ラムズイヤーは、水はけの良い土を好みます。酸性土壌を嫌うため、中性〜弱アルカリ性に整えるのがポイントです。
鉢植えの場合は、市販のハーブ用・草花用培養土が手軽です。自分で配合する場合は、赤玉土7・腐葉土3の割合に軽石を少量加えるなど、水はけを重視した配合にします。地植えの場合は、植え付けの10日〜1週間前までに苦土石灰を混ぜて土の酸性を中和しておきましょう。過湿を防ぐため、平地ではやや土を盛って高植えにすると、夏越しの成功率が上がります。
ラムズイヤーの種まきと植え付け
ラムズイヤーは苗からはもちろん、種からも育てられます。それぞれの方法とコツを見ていきましょう。
種まきの時期と方法
種まきの適期は、発芽適温の15〜20℃に合う春(4〜5月)または秋(9〜10月)です。涼しい地域では、桜が散るころの春まきがよく育ちます。
種まきの手順は、育苗ポットや育苗箱に種まき用土を入れ、種をまいて薄く土をかけます。ここで重要なのが、ラムズイヤーの種は光が当たることで発芽する「好光性種子」だという点です。土を厚くかぶせると発芽しにくくなるため、覆土はごく薄くするのがコツです。発芽までは乾かさないよう水やりを続け、本葉が5〜6枚になったら鉢や庭へ植え付けます。
苗の植え付け
苗を植え付ける適期も、春(3〜5月)または秋(9〜10月)です。真夏と真冬は避けます。
地植えの場合は、水はけと風通しの良い場所を選び、株間を20cmほどあけて植え付けます。横に広がって育つので、隣の植物との間隔は十分にとりましょう。鉢植えの場合は6〜8号鉢を用意し、鉢底に軽石を敷いて水はけを良くしてから植え付けます。いずれも植え付け後はたっぷりと水を与えます。
ラムズイヤーの日常管理(水やり・肥料)
植え付けが終わったら、日々の水やりと肥料の管理に移ります。乾燥を好む性質と、葉が水に弱い点を押さえておきましょう。
水やり
ラムズイヤーは乾燥気味の管理を好みます。地植えの場合は、根づいた後は基本的に雨任せで、水やりはほとんど必要ありません。鉢植えの場合は、土が乾いたら鉢底から流れ出るくらいたっぷりと与えます。
最も注意したいのが水のかけ方です。ラムズイヤーの葉は細かな産毛に覆われているため、葉に水がかかると蒸れてシミができたり傷んだりします。水やりは葉や株全体にかけず、株元の地面を狙って与えるようにしましょう。これは病気の予防にもつながる重要なポイントです。
肥料の与え方
ラムズイヤーは少ない栄養でも丈夫に育つため、肥料は控えめで十分です。植え付け時に元肥として緩効性化成肥料を土に混ぜておきましょう。
地植えの場合、追肥は基本的に不要です。鉢植えの場合は、生育期の春(3月下旬〜5月)に液体肥料を施す程度で十分です。肥料、特に窒素分が多すぎると、茎葉が茂りすぎて間のびした姿になったり、軟弱に育って病害虫がつきやすくなったりします。控えめに与えるほうが、株がきれいにまとまります。
【最重要】ラムズイヤーの夏越し
ラムズイヤー栽培の成否を分ける最大のポイントが、夏越しです。冬の寒さには強い一方、日本の夏の高温多湿には非常に弱く、株が蒸れて枯れこんでしまうことが多いためです。ここを乗り切れるかどうかが、長く楽しめるかどうかの分かれ目になります。
夏越しのカギは「風通し」と「過湿を避けること」の2点です。具体的には、次のような対策を行います。
まず、梅雨に入る前に切り戻しを行います。株が混み合った部分や、咲き終わった花茎を株元から切り取り、全体を半分〜3分の1ほどに刈り込んで風通しを良くします。特に花の時期は花茎が何本も立ち上がって蒸れやすくなるため、花が一通り咲き終わったら花茎を根元からばっさり切るのが効果的です。
次に、置き場所を工夫します。鉢植えなら、梅雨や長雨の時期は雨の当たらない軒下などに移動させ、真夏は風通しの良い半日陰の涼しい場所で管理します。地植えの場合は、夏の直射日光や西日を避けられる、木陰になるような場所が向いています。前述のとおり、水やりは葉にかけず株元に行い、過湿を徹底的に避けることが、夏を無事に越すコツです。
ラムズイヤーの花と花後の手入れ
ラムズイヤーは初夏に花を咲かせます。花を楽しんだ後の手入れも、夏越しや株姿の維持に関わる大切な作業です。
5月中旬〜7月ごろ、花茎の先に紫やピンクの小さな花を穂状に咲かせます。花そのものはあまり目立ちませんが、シルバーリーフとのコントラストが楽しめます。
花が終わったら、花茎を株元から切り取りましょう。咲き終わった花茎を残しておくと、株を圧迫したり、種がこぼれて増えすぎたり、蒸れの原因になったりします。花茎をドライフラワーにしたい場合は、満開を待たず開花まもないうちに切り取ると、きれいな状態で仕上がります。
ラムズイヤーの冬越し
ラムズイヤーは耐寒性が強く、−10℃程度までは耐えられるため、寒冷地以外の多くの地域では屋外でそのまま冬を越せます。冬越しはそれほど難しくありません。
冬越しのポイントは2つです。まず、冬になって枯れた古い葉は株元から取り除き、風通しを良くしておきます。次に、寒さには強いものの凍結や乾燥には弱いため、地植えの場合は株元に敷きワラやバークチップ、落ち葉などでマルチングをして、凍結と乾燥から根を守ります。これらの覆いは、春になったら取り除きましょう。
寒冷地(北海道)でのラムズイヤー栽培
ラムズイヤーは、暖地の栽培者が夏越しに苦労する一方で、北海道のような冷涼地ではむしろ本領を発揮する植物です。北海道でハーブや植物を育ててきた経験から、寒冷地ならではのポイントをお伝えします。
最大の利点は、夏越しの苦労がほとんどいらないことです。暖地では真夏に半日陰へ移すなどの対策が必須ですが、夏が涼しく湿度の低い北海道では、一日中日が当たる場所でも問題なく夏を越せることが多く、むしろ日なたでのびのびと育ちます。シルバーの葉色も鮮やかに保たれ、雨に当たっても葉が傷みにくい傾向があります。
一方で注意したいのが冬の寒さです。ラムズイヤーの耐寒性は−10℃ほどなので、−20℃近くまで下がる道東・道北などの厳寒地では、屋外での冬越しが難しい場合があります。その際は鉢植えを室内の明るく涼しい場所に取り込み、水やりは乾いたら少量ずつにとどめて管理しましょう。なお、雪がしっかり積もる地域では、雪が天然の保温材となって株を守ってくれるため、雪の下で越冬できることもあります。春に雪が融けたら、屋外に出して庭植えにしても、鉢のまま育て続けても構いません。
ラムズイヤーの増やし方(株分け・挿し木)
ラムズイヤーは種まきのほか、株分けと挿し木でも手軽に増やせます。よく増える植物なので、株の若返りも兼ねて増やすとよいでしょう。
株分けで増やす
株分けの適期は、生育のよい春(3〜5月)または秋(9〜10月)です。ラムズイヤーは地表を這うように茎を広げて育つので、広がった株を掘り上げ、新芽・茎・根が均等に分かれるように手やハサミで切り分けます。
切り分けた株を新しい場所に植え付け、たっぷり水を与えれば完了です。株分けは増やすだけでなく、混み合った株の風通しを良くし、株の中心が枯れるのを防いで若返らせる効果もあります。
挿し木で増やす
挿し木の適期も春か秋です。元気な茎を先端から10cmほど切り取り、土に挿す部分の下葉を取り除きます。大きな葉は蒸散を抑えるため半分ほどに切り、30分ほど水揚げしてから、赤玉土など清潔な挿し木用土に挿します。
直射日光の当たらない明るい日陰で、乾かさないように管理すると、1か月ほどで発根します。新芽が動き出し発根が確認できたら、鉢や庭へ植え替えましょう。
ラムズイヤーが増えすぎるのを防ぐ方法
ラムズイヤーは地面を這って広がる丈夫な植物で、グランドカバーに向く反面、放っておくと増えすぎて周囲の草花を侵すことがあります。増えすぎを防ぐには、次の方法が有効です。
生育旺盛な春や秋に、伸びすぎた茎の先をカットしたり、込み合った部分を間引いたりして、コンパクトに仕立てます。また、花が終わると種がこぼれて自然に増えるため、種で増やしたくない場合は花茎を早めに切り落とします。さらに、2年に1回程度、株分けを兼ねて植え替えると、増えすぎを抑えつつ株を若返らせることができます。これらで生育をコントロールすれば、増えすぎに悩まされずに済みます。
ラムズイヤーの病害虫
ラムズイヤーは比較的丈夫で病害虫の害は少ない植物ですが、いずれも「蒸れ」が引き金になる点に注意が必要です。
最も多いのが、過湿による根腐れと、高温多湿期に発生するうどんこ病です。うどんこ病は葉の表面が白い粉をふいたようになり、進行すると光合成を妨げます。いずれも風通しを良くし、葉に水をかけず株元に水やりすることが予防の基本です。発生したら傷んだ部分を早めに切り取ります。害虫では、風通しが悪いとアブラムシがつくことがあります。見つけしだい取り除き、株を健康に保つことが何よりの対策です。
ラムズイヤーの育て方に関するQ&A
最後に、ラムズイヤーの育て方でよくある疑問にお答えします。
葉がしおれる・枯れる原因は?
最も多いのは、高温多湿による蒸れです。蒸れた環境では根腐れやうどんこ病が起きやすく、枯れこむ原因になります。風通しの良い場所に植える、切り戻して蒸れを防ぐ、梅雨時は雨の当たらない場所に移す、といった対策が大切です。このほか、水切れや寒さでしおれることもあります。
ラムズイヤーに似た植物は?
よく似ているのが、リクニス・コロナリア(フランネルソウ)です。白い産毛をまとったシルバーの葉がそっくりですが、花の形で見分けられます。穂状に紫系の花を咲かせるのがラムズイヤー、ナデシコのように平らに花弁が開くのがリクニス・コロナリアです。このほか、シロタエギク(キク科)も白い葉の植物として似た用途で使われます。
「シルバーカーペット」も同じ育て方でいい?
シルバーカーペットはラムズイヤーの品種の一つで、産毛が密につき葉色がより白いのが特徴です。ほとんど花を咲かせず、葉を楽しむタイプです。育て方は基本的に同じですが、横に広がって株が密集しやすいので、こまめに切り戻して蒸れを防ぐとよいでしょう。
まとめ:ラムズイヤーの育て方のポイント
ラムズイヤーは、ふわふわのシルバーリーフが魅力のシソ科の多年草です。最後に、育て方の要点をおさらいしましょう。
ラムズイヤーは日なたと風通しの良い、水はけのよい場所を好み、酸性土壌を嫌います。乾燥気味に管理し、産毛のある葉が蒸れないよう、水は葉にかけず株元に与えるのがコツです。
そして最大のポイントが夏越しです。寒さには強い反面、日本の高温多湿の夏が苦手なので、梅雨前に切り戻して風通しを良くし、真夏は涼しい半日陰で過湿を避けて管理しましょう。よく増える植物なので、株分けで若返らせながら、増えすぎは切り戻しでコントロールできます。夏越しのコツさえつかめば長く楽しめるので、ぜひ育ててみてくださいね。
ラムズイヤーの使い方については、こちらのページで詳しくご紹介しています。