ナスタチウムは、鮮やかな花を観賞できるだけでなく、花や葉、種子を食用にできるエディブルフラワーとしても人気のハーブです。
別名をキンレンカ(金蓮花)、ノウゼンハレンともいい、蓮に似た丸い葉とビタミンカラーの花が魅力です。育てるのはそれほど難しくありませんが、暑さに弱い性質や、ひょろひょろと徒長させない管理など、いくつかコツを押さえると元気に育ちます。
この記事では、ナスタチウムの育て方を、基本情報から種まき・植え付け・日々の管理・夏越し冬越し・収穫まで、栽培の流れに沿って紹介します。これから育ててみたい方は、ぜひ参考にしてください。
ナスタチウム(キンレンカ)とは|基本情報
育て方に入る前に、まずはナスタチウムがどんな植物なのかを押さえておきましょう。性質を知っておくと、その後の管理がぐっと分かりやすくなります。
ここでは分類・原産・名前の由来と、品種のタイプを紹介します。
分類・原産・名前の由来
ナスタチウムは、学名を Tropaeolum majus といい、ノウゼンハレン科ノウゼンハレン属の一年草です。和名はノウゼンハレン(凌霄葉蓮)で、キンレンカ(金蓮花)とも呼ばれます。
原産は南米(ペルー、コロンビアなど)で、日本へは江戸時代末期に渡来しました。「ナスタチウム」という呼び名は、本来クレソン(オランダガラシ属)を指す名で、葉にクレソンに似たピリッとした辛みがあることから転用された通称です。学名のトロパエオルムはギリシャ語で戦勝記念(トロフィー)を意味し、丸い葉を盾、花を兜に見立てて名づけられました。
つる性と矮性の品種タイプ
ナスタチウムには、茎が長く伸びる「つる性タイプ」と、茎が伸びずコンパクトにまとまる「矮性(わい性)タイプ」があります。
つる性タイプはハンギングバスケットやフェンスのグリーンカバーに向き、矮性タイプは鉢植えや花壇、寄せ植えに扱いやすいのが特徴です。育てる場所や用途に合わせて選ぶとよいでしょう。
種まきの時期と方法
ナスタチウムは種が大きく扱いやすいため、種から育てるのが一般的です。ただし種に光を嫌う性質と硬い種皮があるので、まき方にコツがあります。
ここでは種まきの適期と、正しい手順を紹介します。
種まきの適期と下準備
種まきの適期は、4〜5月と9月ごろです。発芽適温は15〜20℃なので、地域に合わせて時期を調整します。寒冷地や早く咲かせたい場合は、室内で早めにまいて苗を育てる方法もあります。
ナスタチウムの種は光を嫌う嫌光性なので、まいたら1cmほどしっかり覆土します。また種皮が硬いため、一晩水に浸けてからまくと発芽がそろいやすくなります。市販の種で種皮が削ってあるものは、下処理は不要です。
種まきの手順
具体的な手順は次のとおりです。
- 育苗ポットに種まき用土を入れる。
- 1ポットにつき1〜数粒の種をまく。
- 1cmほど覆土する(光を嫌うのでしっかりかぶせる)。
- 土が乾かないよう水やりをして管理する。
- 1週間ほどで発芽する。
- 発芽後は日当たりのよい場所に移し、元気な株を残して間引く。
本葉が2〜3枚になったら、鉢や地面に植え付けます。鉢やコンテナに直まきしても育てられます。
苗の植え付け(地植え・鉢植え)
苗が育ったら、花壇や鉢に植え付けます。ナスタチウムは移植をやや嫌うので、根鉢を崩さずに植え付けるのがコツです。
ここでは地植えと鉢植え、それぞれの植え付け方を紹介します。
地植えの方法
地植えの適期は、遅霜の心配がなくなる3月下旬〜5月中旬ごろです。手順は次のとおりです。
- 畑を耕して土をほぐし、腐葉土などを混ぜて水はけのよい土にする。
- 元肥として緩効性肥料を控えめに混ぜ込む。
- 苗より一回り大きな植え穴を掘る。
- 根鉢を崩さないように苗を入れ、土をかぶせて軽く固める。
- 植え付け後はたっぷり水やりをする。
横に広がって育つため、複数植える場合は株間を20〜30cmあけ、日当たりと風通しのよい場所に植えます。
鉢植え・プランターの方法
鉢植えも植え付け適期は地植えと同じ3月下旬〜5月中旬ごろです。水はけと通気性のよい土を使い、市販の草花用培養土やハンギング用の土、または赤玉土5:ピートモス3:パーライト2などの配合土を用います。
鉢底にネットと鉢底石を入れ、苗より一回り大きな鉢に1株ずつ植えます。元肥として緩効性肥料を混ぜておき、植え付け後はたっぷり水やりをします。つる性品種はハンギングバスケットに植えると、垂れ下がる姿がよく映えます。
ナスタチウム栽培の環境と日常管理
植え付けたあとは、置き場所・水やり・肥料の3つを押さえれば、丈夫に育ちます。ナスタチウムは「乾かし気味・肥料控えめ」が基本です。
ここでは置き場所と水やり、肥料のポイントを紹介します。
置き場所と水やり
ナスタチウムは日当たりと風通しのよい場所を好みますが、真夏の高温と直射日光が苦手です。夏は明るい半日陰に移すか、遮光ネットで日差しを和らげます。
乾燥に強いので、水は控えめに管理します。鉢植えは土が乾いてからたっぷり与え、地植えは根づいたらほとんど水やりは不要です。水のやりすぎは根腐れや徒長の原因になるので注意します。
肥料の与え方
肥料は多くを必要としません。植え付け時に緩効性肥料を元肥として混ぜ込み、夏を除く生育・開花期に液体肥料を10日〜2週間に1回ほど与えます。
窒素分の多い肥料を与えすぎると、葉ばかり茂って花が咲かなくなります。肥料は控えめを心がけ、地植えではほとんど追肥は不要です。
剪定・摘心・花がら摘み
ナスタチウムは、摘心や花がら摘みといった手入れをすると、こんもり茂って花数が増えます。
ここでは摘心と花がら摘み、混み合った部分の整理について紹介します。
摘心で花数を増やす
摘心は、苗が根づいて2週間ほど経ったころに行います。茎の先端の新芽を、2〜3枚目の葉が展開した時点で手で軽くつまんで摘み取ります。
これにより脇芽が伸びて枝数が増え、花つきがよくなります。一度に多くを摘むと負担になるので、数日おきに少しずつ行うとよいでしょう。
花がら摘みと混み合った部分の整理
ナスタチウムは花がらや種をつけると花つきが悪くなります。しぼんだ花や若い種はこまめに摘み取ると、次々と花が咲きます。
また、茂りすぎて蒸れそうな部分や枯れ葉は取り除き、風通しをよくします。つるが伸びる品種は、支柱やフェンスに誘引すると倒れを防げます。
夏越しの方法
ナスタチウムは高温多湿に弱く、夏に弱りやすい植物です。アンデスの高地が原産で、25℃を超える暑さが苦手なためです。
ここでは夏越しの切り戻しと、夏場の管理を紹介します。
夏前の切り戻し
梅雨明けの7月中旬〜下旬ごろ、草丈の3分の1ほどまで思い切って切り戻します。これにより株の負担が減り、蒸れを防いで、涼しくなる秋に再び花を咲かせやすくなります。
徒長して間延びした株も、このタイミングで切り戻すと姿が整います。
夏場の置き場所と水やり
夏は直射日光を避け、風通しのよい明るい半日陰に移すか、遮光して涼しく保ちます。
水やりは土の表面が乾いてから行い、過湿を避けます。肥料も夏は控えめにします。高温乾燥期はハダニが出やすいので、葉裏に葉水をかけて予防するとよいでしょう。
耐寒性と冬越し
ナスタチウムは耐寒性が弱く、霜や寒風に当たると枯れてしまいます。一年草として扱われますが、条件が合えば冬越しできることもあります。
ここでは冬越しの方法を、鉢植えと地植えに分けて紹介します。
鉢植えの冬越し
気温が5℃を下回ると弱るため、冬になる前に鉢植えは室内へ取り込みます。日当たりのよい窓辺に置き、水やりは土が乾いたら控えめに行います。
室内の暖かい環境を保てれば、冬の間も花を楽しめることがあります。
地植えの冬越し
地植えや室内に取り込めない場合は、防寒対策を行います。株元に藁や落ち葉を敷いて保温し、霜が降りそうな夜はビニールや不織布で覆って保護します。
ただし寒さに弱い植物なので、霜の降りる地域では屋外での越冬は難しいことが多く、種を採って翌春にまき直すのが確実です。
ナスタチウムの増やし方
ナスタチウムは、種まきと挿し芽で増やせます。こぼれ種からも自然に増えることがあります。
ここでは挿し芽とこぼれ種について紹介します。
挿し芽で増やす
挿し芽の適期は6月ごろです。茎を5〜10cm切り取り、上部の葉を数枚残して下葉を取り除き、切り口を斜めにカットします。
切り口を1〜2時間水に浸け、発根促進剤をつけてから、土に挿します。根がつくまでは明るい日陰で乾かさないように管理し、発根したら鉢上げします。乾燥が気になる場合は、ふんわりビニールをかけると安心です。
こぼれ種で増やす
ナスタチウムはこぼれ種からもよく発芽します。ベランダ栽培でも、こぼれた種から新しい株が育つことがあります。
たくさん増やしたい場合は、熟した種を採取し、一晩水に浸けてからまくと発芽がそろいやすくなります。
収穫と食べ方(エディブルフラワー)
ナスタチウムは花・葉・種子のすべてが食用になり、エディブルフラワーとして人気です。クレソンに似たピリッとした辛みがあり、サラダや酢漬けなどに使えます。
ここでは部位ごとの収穫方法と、食用にする際の注意を紹介します。
部位ごとの収穫方法
それぞれの収穫のポイントは次のとおりです。
| 花 | 咲いたら摘み取ります。水でやさしく洗い、水気を切ってから使います。彩りとしてサラダやデザートに向きます。 |
| 葉 | 随時収穫できます。若い葉のほうが柔らかく、ピリッとした辛みを楽しめます。株の外側から摘み取ります。 |
| 種子 | 未熟な緑色の種は、すりおろして薬味にしたり酢漬けにしたりできます。完熟して黄土色になった種は、翌年用の採種に使えます。 |
食用にするときの注意
食用にする場合は、必ず食用・エディブルフラワーとして販売されている苗や種から育てたものを使います。
観賞用として流通している苗は、食用を想定した農薬管理がされていないことがあるため、口に入れる用途には向きません。食用にしたい場合は、食用として販売されている苗・種を選んで育てると安心です。
ナスタチウムをコンパニオンプランツとして使う
ナスタチウムは、野菜の近くに植えて害虫を遠ざける「コンパニオンプランツ」としても人気があります。家庭菜園でも活躍します。
ここでは効果と、相性のよい野菜を紹介します。
コンパニオンプランツとしての効果
ナスタチウムは、その香りや成分でアブラムシなどの害虫を遠ざける効果があるとされます。アブラムシを引き寄せて野菜から遠ざける「おとり」として使われることもあります。
また、地面を覆うように葉が茂るため、土の乾燥や雑草を抑える効果も期待できます。
相性のよい野菜
特に相性がよいとされるのは、白菜・キャベツ・ブロッコリーなどのアブラナ科の野菜です。これらにつきやすいアブラムシなどの害虫対策に役立ちます。
このほか、トマトやナスなどのナス科、きゅうりなどとの組み合わせも知られています。根が深く張る野菜と合わせると、根の競合が起きにくく管理しやすくなります。
ナスタチウムの育て方に関するQ&A
最後に、ナスタチウムの育て方でよく寄せられる質問にお答えします。
- 花が咲かないのはなぜ?
- ひょろひょろ徒長・倒れるのはなぜ?
- 芽が出ない理由と対処法は?
花が咲かないのはなぜ?
花が咲かない主な原因は、肥料の与えすぎ・暑さ・種のつけすぎの3つです。
窒素分の多い肥料を与えすぎると葉ばかり茂ります。与えすぎた場合は水やりで肥料分を流します。また真夏は暑さで開花が止まりやすいので、涼しく管理します。花がらや若い種はこまめに摘み取ると、花つきがよくなります。
ひょろひょろ徒長・倒れるのはなぜ?
徒長の主な原因は、水のやりすぎと肥料(特に窒素)の与えすぎです。過湿にすると茎だけが伸びて花つきが悪くなります。
対策としては、土の表面が乾いてから水やりをし、肥料を控えめにします。伸びすぎた茎は7月中旬〜下旬に思い切って切り戻すと、秋に再び花が咲きます。つる性品種は支柱やフェンスに誘引すると倒れを防げます。
芽が出ない理由と対処法は?
芽が出ない主な原因は、種が古い・種皮が硬い・温度が低い・水分管理の不適切さです。
新しい種を使い、自分で採った種は硬い種皮を一晩水に浸けるか軽く削ってからまきます。発芽適温(15〜20℃)を保ち、土を乾かさないように管理します。光を嫌う嫌光性なので、覆土は1cmほどしっかりかぶせることも大切です。
まとめ:ナスタチウムの育て方のポイント
この記事では、ナスタチウムの育て方を基本情報から収穫まで紹介しました。ポイントは次のとおりです。
- ナスタチウムはノウゼンハレン科の一年草で、別名キンレンカ・ノウゼンハレン。
- 種は嫌光性なので1cmほどしっかり覆土し、硬い種皮は一晩水に浸ける。
- 種まきは4〜5月と9月ごろ。発芽適温は15〜20℃。
- 乾かし気味・肥料控えめが基本。やりすぎると徒長し花が咲かない。
- 暑さに弱いので、7月中下旬に切り戻して夏越しさせる。
- 耐寒性が弱いので、冬は室内に取り込むか防寒する。
- 花・葉・種子は食用になる。食用には食用として販売された苗・種を使う。
- アブラムシ対策のコンパニオンプランツとしても活躍する。
観賞にも食用にも家庭菜園にも使える、用途の広い植物です。ポイントを押さえて、彩り豊かなナスタチウムを楽しんでください。