トケイソウは時計の文字盤のような独特な花を咲かせる、つる性の植物です。エキゾチックな見た目とグリーンカーテンへの活用しやすさから、「庭に植えてみたい」と考える方も多いでしょう。
ところが実際に調べてみると、「トケイソウは植えてはいけない」という声が少なからず見つかります。せっかく植えるなら、不安な点は先に解消しておきたいものですよね。
この記事では、トケイソウが植えてはいけないと言われる4つの理由と、その実情・対策をわかりやすく整理しました。結論からお伝えすると、ポイントを押さえれば家庭でも十分に楽しめる植物です。これから育てようか迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。
トケイソウとは
トケイソウは南北アメリカの熱帯地域を中心に約500種が分布する、つる性の植物です。花の中心にある雌しべと放射状の副花冠を時計の文字盤と針に見立てたことから、「時計草」の名が付けられました。観賞用として高い人気があります。
仲間のなかには果実を食用とする品種もあり、クダモノトケイソウの実は「パッションフルーツ」として親しまれています。一方で、観賞を目的とした品種も多く、見た目が似ていても果実を食べてよいとは限らない点には注意が必要です(詳しくは後述します)。
また、トケイソウはハーブとしても利用されてきました。チャボトケイソウ(Passiflora incarnata)などはフラボノイドを含み、リラックスを目的としたハーブティーの原料として、ほかのハーブとブレンドして飲まれることがあります。
「トケイソウを植えてはいけない」と言われる4つの理由
トケイソウを植えてはいけないと言われる理由として、主に以下の4つが挙げられます。
- ツルが旺盛に伸びて管理が大変になるから
- 葉や茎、未熟な果実に毒性があるから
- 花言葉が怖いと言われるから
- 花の見た目がグロテスクに感じる人がいるから
それぞれの理由について、もう少し詳しくお伝えします。
ツルが旺盛に伸びて管理が大変になるから
トケイソウはつる性で生育が早く、放っておくと数メートルの高さまで伸びて、辺り一面に広がってしまうことがあります。
うまく活用すればグリーンカーテンとして役立ちますが、伸ばしっぱなしにすると以下のようなデメリットが生じます。
- 枝葉が茂りすぎて風通しが悪くなり、病害虫が発生しやすくなる
- ほかの植物が日陰になり、生育が悪くなる
- 誘引や剪定などの手入れに手間がかかる
逆に言えば、こまめに誘引・剪定をすればコントロールは十分可能です。初めて植える場合は、成長スピードを見越したうえで育てる場所と支柱を準備しておきましょう。
葉や茎、未熟な果実に毒性があるから
トケイソウの葉や茎、そして未熟な果実には、青酸配糖体(シアン化合物の一種)が含まれています。組織が傷つくと微量の青酸を放出する性質があり、これは植物が害虫などから身を守るための仕組みです。
葉や茎を日常的に口にすることは少ないですが、子供やペットが誤ってかじってしまう可能性は否定できません。植える場所には配慮が必要です。
毒性の具体的な内容や、パッションフルーツとの関係については、後ほど「トケイソウとパッションフルーツの違い・毒性の正しい知識」の項で詳しくお伝えします。
花言葉が怖いと言われるから
トケイソウの花言葉には宗教的な意味合いを持つものがあり、それが「怖い」という印象につながることがあります。
しかし、実際の花言葉に怖い意味は含まれていません。背景を正しく知れば、むしろ前向きな意味であることがわかります。詳しくは後半でご紹介します。
花の見た目がグロテスクに感じる人がいるから
トケイソウの花の形は独特で、人によっては「グロテスク」「気持ち悪い」と感じることがあるようです。
一方で、その造形を「エキゾチックでアートのよう」と魅力に感じる人も多くいます。見た目の感じ方は人それぞれで、これも「植えてはいけない」と言われる一因になっているようです。こちらも後半で両方の見方を紹介します。
トケイソウは対策すれば植えても大丈夫【結論】
ここまで4つの理由を挙げましたが、結論として、トケイソウは適切に対策すれば家庭でも問題なく楽しめる植物です。
「植えてはいけない」と言われる理由の多くは、ツルの管理や毒性への配慮といった、事前に知っていれば対処できることばかりです。次の章で、具体的な対策を5つに整理してお伝えします。
トケイソウを安全・上手に育てる5つの対策
トケイソウを植えて後悔しないために、以下の5つのポイントを押さえておきましょう。
- 鉢植え(プランター)で管理しやすくする
- こまめな誘引・剪定でツルをコントロールする
- 子供やペットが葉・果実を口にしないよう配慮する
- 植え付けの適期と場所を選ぶ
- 地植えで越冬させたい場合は耐寒性で品種を選ぶ
鉢植え(プランター)で管理しやすくする
ツルの広がりや株の大きさをコントロールしやすくするには、地植えよりも鉢植えがおすすめです。鉢植えなら設置場所を移動でき、子供やペットの手が届きにくい場所に置くこともできます。冬に室内へ取り込むのも容易です。
トケイソウは浅根性なので、深さよりも幅のある鉢を選ぶと根が広がりやすく、花つきもよくなります。
こまめな誘引・剪定でツルをコントロールする
生育期はツルがよく伸びるため、支柱・フェンス・オベリスク・ネットなどに誘引しながら育てます。伸びすぎた枝は切り戻すことで、四方に絡まるのを防げます。
枝先を軽く剪定することを繰り返すと枝数が増え、花数も多くなります。手入れの手間はかかりますが、これがツルを「手に負えない」状態にしないための最大の対策です。
子供やペットが葉・果実を口にしないよう配慮する
前述のとおり、トケイソウの葉・茎・未熟果には青酸配糖体が含まれます。小さなお子さんやペットがいるご家庭では、手の届かない場所で育てる、観賞用品種の果実は食べないよう徹底するといった配慮をしましょう。鉢植えで隔離できる環境にしておくと安心です。
植え付けの適期と場所を選ぶ
トケイソウの植え付け適期は、気温が上がり根づきやすい4月〜6月頃です。日当たりと水はけのよい場所を選び、深植えは避けます(深植えにすると地際から枯れることがあります)。
地植えの場合は、あらかじめ腐葉土などの有機物を混ぜて土をよく耕しておくと根張りがよくなります。
地植えで越冬させたい場合は耐寒性で品種を選ぶ
トケイソウは多くの種が寒さに弱く、日本では沖縄や九州の一部地域を除き、庭植えのままでは冬越しが難しいとされています。
ただし、カエルレア種(Passiflora caerulea)やその園芸品種など、耐寒性の強い種類もあります。寒い地域で地植えにしたい場合は、こうした耐寒性のある品種を選び、株元に敷きわらをする・不織布で覆うなどの防寒対策を行いましょう。耐寒性のある品種は、地上部が枯れても根が生きていれば翌春に再び芽吹くことがあります。
寒冷地で確実に冬越しさせたい場合は、秋に鉢へ植え替えて室内に取り込むのが安全です。
トケイソウとパッションフルーツの違い・毒性の正しい知識
「トケイソウには毒があるのに、パッションフルーツは食べて大丈夫なの?」と疑問に思う方は多いはずです。ここで正しく整理しておきましょう。
食用はクダモノトケイソウだけ|観賞用の果実は食べない
私たちが「パッションフルーツ」として食べているのは、トケイソウの仲間であるクダモノトケイソウ(Passiflora edulis)の完熟果実です。
一方、観賞を目的とした多くのトケイソウは食用ではありません。見た目が似た実をつける品種もありますが、安全に食べられるとは限らないため、観賞用品種の果実は口にしないようにしましょう。種類を正しく見極めることが大切です。
なお、食用のクダモノトケイソウでも、安全に楽しめるのは十分に完熟した果実です。葉・茎・未熟な果実には毒性成分が含まれるため、口にするのは避けてください。
含まれる成分と中毒症状
トケイソウの葉・茎・未熟果に含まれる代表的な成分は、青酸配糖体(シアン化合物の一種)です。組織が傷つくと酵素の働きで青酸を生じます。
大量に摂取した場合、頭痛・めまい・吐き気・嘔吐などの中毒症状が現れる可能性があります。日常的に葉を食べることはまずありませんが、子供やペットの誤食には注意しましょう。
このほか、トケイソウの一部の種にはごく微量のアルカロイドも報告されていますが、家庭で観賞用に育てる範囲で問題になるような量ではありません。過度に心配する必要はなく、「葉・茎・未熟果は口にしない」という基本さえ守れば安心して育てられます。
トケイソウの花言葉は怖くない|本当の意味
トケイソウの花言葉は、「聖なる愛」「信仰」「宗教的熱情」などです。字面だけ見ると重々しく、怖いイメージを持たれることがあります。
しかしこれらは、トケイソウの独特な花姿がキリストの受難を象徴する花とされてきた歴史に由来するもので、ネガティブな意味ではありません。
聖なる愛
純粋で揺るぎない愛情を表します。キリストの受難を象徴する花とされたことから、深い愛情や献身的な気持ちを伝える花言葉として用いられます。
信仰
信じる心や宗教的な信念を表します。独特な花の形状が、人々の信仰心や精神的な支えを象徴しているとされています。
宗教的熱情
信仰に対する情熱や熱意を意味します。困難に立ち向かう勇気や、強い意志を持つ人への称賛を込めて贈ることもできます。
このように、トケイソウの花言葉は怖い意味ではなく、むしろ深い愛情や信仰心を表す前向きな言葉です。贈り物に添える際の参考にしてみてください。
トケイソウの見た目が気持ち悪い?美しいと感じる人の声も
トケイソウの花を「気持ち悪い」と感じる人がいる理由として、次のような点が挙げられます。
- 花の形が独特で、不自然・グロテスクに見える
- 花の色が派手で、目につきすぎると感じる
花の中心にある雌しべは先端が3つに分かれており、時計の針のようにも、十字架のようにも見えます。放射状に並ぶ花びらや副花冠は文字盤のようでもあり、人によっては細長い突起が触手のように映ることもあるようです。これらはすべて、昆虫や鳥を引き寄せて受粉するために進化した姿です。
一方で、この独創的な造形を「アートのようだ」「エキゾチックで美しい」と魅力に感じる人も多くいます。第一印象では驚いても、見慣れるとその個性的な形に惹かれていく、という声も少なくありません。感じ方は人それぞれですが、唯一無二の存在感はトケイソウならではの魅力と言えるでしょう。
まとめ:トケイソウを植えてはいけないと言われる理由と実情
トケイソウが「植えてはいけない」と言われる理由は、主に次の4つでした。
- ツルが旺盛に伸びて管理が大変になる
- 葉・茎・未熟果に毒性(青酸配糖体)がある
- 花言葉が怖いと言われる
- 花の見た目をグロテスクに感じる人がいる
しかし、いずれも事前に知っていれば対処できることばかりです。鉢植えで管理する、こまめに誘引・剪定する、葉や未熟果を口にしないよう配慮する、品種と植え場所を選ぶ──これらを押さえれば、トケイソウは家庭でも安心して楽しめます。
独特で美しい花を咲かせるトケイソウを、ぜひ上手に育ててみてください。