「リコリスは体に悪い」という話を耳にして、不安に思っている方もいるのではないでしょうか。
リコリスは和名を「甘草(かんぞう)」といい、マメ科カンゾウ属の多年草です。砂糖の何十倍もの甘さを持つ成分を含み、お菓子やハーブティー、漢方薬、さらには醤油や漬物などの甘味料としても幅広く使われています。
結論からお伝えすると、リコリスは適量であれば過度に心配する必要はありませんが、「摂りすぎ」や「長期間の摂取」には注意が必要なハーブです。
この記事では、リコリスが体に悪いといわれる理由、過剰摂取で起こりうるリスク、安全な摂取量の目安、そして特に注意すべき人について、公的な情報をもとにわかりやすく解説します。
リコリス(甘草)とは?まず基本を整理
リコリスは、地中海沿岸から西アジアにかけての地域を原産とする、マメ科カンゾウ属の多年草です。和名を「甘草」といい、その名のとおり、根の部分に強い甘味があります。
この甘味のもとになっているのが、グリチルリチン(グリチルリチン酸)という成分です。砂糖の50倍ほど(資料によって幅があります)の甘さがあるとされ、低カロリーの甘味料としても利用されています。
リコリスは、ハーブティーや漢方薬のほか、お菓子(北欧のサルミアッキなど)、清涼飲料水、醤油、味噌、漬物、つくだ煮など、さまざまな食品に甘味料として使われています。身近な食品に広く使われているからこそ、知らないうちに摂取量が多くなってしまう可能性がある点には注意が必要です。
リコリスは体に悪い?結論と理由
「リコリスは体に悪い」といわれることがありますが、正確にはリコリス自体が悪いというより、グリチルリチンを過剰に、あるいは長期間にわたって摂取することにリスクがある、というのが実際のところです。
適量を楽しむ範囲であれば、過度に恐れる必要はありません。実際、リコリスは古くから世界中で食品や生薬として親しまれてきました。
ただし、グリチルリチンには、摂りすぎると体内のミネラルバランスに影響を与える性質があります。これが、次に説明する「偽アルドステロン症」と呼ばれる状態につながることがあるため、量と期間には気をつける必要があるのです。
過剰摂取で起こりうるリスク「偽アルドステロン症」
リコリス(グリチルリチン)の過剰摂取で最も知られているリスクが、偽(ぎ)アルドステロン症です。
私たちの体には「アルドステロン」というホルモンがあり、体内にナトリウム(塩分)や水分をため込み、カリウムを排出する働きをしています。グリチルリチン酸を多く摂取すると、本来コルチゾールというホルモンを分解する酵素(11β-HSD)の働きが妨げられ、アルドステロンが過剰に働いたのと似た状態が体内で起こります。
その結果、アルドステロン自体の量は増えていないにもかかわらず、次のような症状があらわれることがあります。
- 血圧の上昇(高血圧)
- むくみ
- 血液中のカリウムが減る(低カリウム血症)
- 手足のだるさ、しびれ、つっぱり感、こわばり
- 脱力感、筋肉痛(徐々に強くなることがある)
これは厚生労働省の「重篤副作用疾患別対応マニュアル(偽アルドステロン症)」でも注意が呼びかけられている症状です。実際に、リコリスを成分とする医薬品の添付文書にも、次のような副作用に関する記述があります。
服用後、まれに下記の重篤な症状が起こることがある。その場合は副作用の可能性があるので、直ちに服用を中止し、この製品を持って医師の診療を受けること。
手足のだるさ、しびれ、つっぱり感やこわばりに加えて、脱力感、筋肉痛があらわれ、徐々に強くなる。
こうした症状を感じた場合は、摂取を中止して医師に相談することが大切です。
海外で報告された死亡事例
リコリスのリスクが注目されるきっかけになった、海外の事例があります。
2020年、アメリカ・マサチューセッツ州に住む54歳の男性が、ブラックリコリス(甘草を使った黒いお菓子)を大量に食べ続けた後に心肺停止に陥り、亡くなったことが医学誌で報告されました。男性は数週間にわたり、それまで食べていたフルーツ味のキャンディからブラックリコリスに切り替え、毎日大量に食べていたとされています。原因は、リコリスの過剰摂取による急激なカリウムの低下が、心臓のリズムの乱れ(不整脈)を引き起こしたためと考えられています。
これは極端な大量摂取・長期摂取による、まれな事例です。日常的にハーブティーや食品で少量を楽しむ範囲とは状況が大きく異なるため、過度に怖がる必要はありません。ただ、「摂りすぎは命に関わることもある」という事実は、知っておいて損はないでしょう。
リコリスの安全な摂取量の目安
では、どのくらいが「摂りすぎ」になるのでしょうか。絶対的な基準があるわけではありませんが、公的機関などが示している目安があります。
- 厚生労働省……グリチルリチン酸として1日500mg以上を長期間(1か月以上)摂取した場合に偽アルドステロン症の報告があり、その半量程度でも起こったとする例もあるとされています。また、甘草として1日2.5g(グリチルリチン酸で約100mg)を超えると、低カリウム血症を起こしやすくなるため注意が必要とされています。
- アメリカ食品医薬品局(FDA)……40歳以上の人が、1日約57g(2オンス)のブラックリコリス菓子を2週間ほど食べ続けると、不整脈などで入院する可能性があると注意を促しています。
これらはあくまで目安であり、感じ方には個人差があります。大切なのは、リコリスを少量・短期間にとどめ、毎日のように大量・長期で摂り続けないことです。漢方薬を含め、複数の経路から知らないうちに甘草を摂っているケースもあるため、トータルの量を意識するとよいでしょう。
リコリスで特に注意すべき人
次のような方は、リコリスの影響を受けやすかったり、リスクが高まったりする可能性があります。摂取を控えるか、事前に医師・薬剤師に相談してください。
| 高血圧・心臓病のある人 | 血圧上昇や不整脈などの影響を受けやすいため、特に注意が必要です。 |
| 腎臓・肝臓に疾患のある人 | ミネラルバランスや代謝に影響が出やすいため、摂取は避けるのが無難です。 |
| 妊娠中・授乳中の人 | 念のため、摂取を避けることがすすめられています。 |
| 利尿薬・降圧薬・強心薬などを服用中の人 | 低カリウム血症を起こしやすくなり、重篤化するおそれがあるため、事前に医師に相談してください。 |
| 漢方薬を服用している人 | 日本で流通する漢方薬の多くに甘草が含まれているため、重複して摂りすぎないよう注意が必要です。 |
リコリスに期待される働き
注意点ばかりお伝えしてきましたが、リコリスは適切に使えば古くから親しまれてきたハーブでもあります。
リコリスに含まれるグリチルリチンには、炎症を抑える働きなどが研究・注目されてきました。伝統的には、喉の不調をやわらげたいときや、胃の調子を整えたいときのケアとして用いられてきた歴史があります。また、フラボノイド系の成分による抗酸化作用があるともいわれています。
ただし、これらはあくまで伝統的な利用や研究の話であり、リコリスティーは食品であって、特定の病気を治療・予防するものではありません。体調管理は、バランスのよい食事や十分な休養を基本としつつ、ハーブティーは無理のない範囲で楽しむのがよいでしょう。
リコリスティーの安全な飲み方
リコリスティーは、根の部分を乾燥・刻み加工したものを使って淹れます。
- ティーポットに、小さじ1杯ほどのリコリスを入れる
- カップ1杯のお湯を注ぐ
- 根を使うので、5分ほど(やや長めに)蒸らす
- 黄緑色に色づいてきたら、カップに注ぐ
そのままでも甘くて飲みやすいですが、お好みでハチミツやレモンを加えても楽しめます。甘味があるので、カモミールやジンジャー、ペパーミントなど、ほかのハーブとブレンドすると、苦味や渋味がやわらいで飲みやすくなります。
飲む量は1日1〜2杯程度にとどめ、毎日の長期的な連用は避けるのがおすすめです。むくみやだるさ、血圧の上昇などを感じた場合は、摂取を中止してください。
リコリス配合の市販ブレンドティー
リコリスは、単品よりも、ほかのハーブとブレンドされた市販のティーに配合されていることが多いハーブです。代表的な製品をいくつかご紹介します。なお、ブレンドティーに含まれるリコリスはごく一部であることが多く、通常の飲み方であれば過度に心配する必要はありません。
ヨギティー レモンジンジャー
生姜とレモングラスの爽やかな風味に、リコリスの根が柔らかな甘みを加えているブレンドティーです。
ヨギティー オーガニック ベッドタイム
ミントの香りと自然な甘みが特徴で、カフェインを含まないため、夜のリラックスタイムにも向いています。
ポンパドール ジンジャー&レモン
生姜をたっぷり使ったスパイシーな味わいに、レモンピールやリコリスをブレンドした、爽やかで甘い香りのハーブティーです。無香料・無着色・ノンカフェインで飲みやすいのも特徴です。
まとめ:リコリスは適量を守れば過度に心配いらない
リコリスが体に悪いといわれる理由と、そのリスク・安全な摂取量・注意点について解説しました。ポイントを振り返ります。
- リコリス自体が悪いのではなく、グリチルリチンの過剰摂取・長期摂取がリスクになる
- 摂りすぎると「偽アルドステロン症」(高血圧・むくみ・低カリウム血症・手足のだるさなど)を起こすことがある
- 海外では、リコリス菓子の極端な大量摂取による死亡事例も報告されている
- 厚労省やFDAの目安を参考に、少量・短期間にとどめることが大切
- 高血圧・心臓病・腎臓肝臓疾患のある人、妊娠授乳中の人、薬や漢方を服用中の人は特に注意
リコリスは、量とタイミングを守れば、過度に怖がる必要のないハーブです。身近な食品にも含まれていることを意識しつつ、ハーブティーとして楽しむなら適量を心がけ、体に異変を感じたら無理せず中止して、必要に応じて医師に相談しましょう。